非科学的ですね

永田電磁郎

第1話 管狐とわたくし

 管狐というのは、だいぶ有名だとは思うのだが、一応、簡単に説明すると、狐憑きの正体のようなもので、これを使役するものは、細い管の中で飼育しているのだという。漫画なんかにも出てくる、割とポピュラーなケモノだ。

 中学生の頃、その頃にありがちな友達付き合いだとかの悩みでいっぱいいっぱいだった時期があった。

 ある夜、夢の中で私は懐かしい多摩川の河原に立っていた。幼児の頃、なぜか野良のアヒルがいっぱいいて、毎日、パンなどを与えに行っていた川べりのよどんで流れが緩やかになっている場所である。

 そこには何故か大きな箪笥があった。そして、巫女姿の見知らぬ女性が、そこから管狐の管を取り出した。半ば無理矢理、私にそれを与え「これでもう、友達の事で悩まなくてもいいからね」と断言した。

 私は、それは欲しくなかったのである。友達付き合いに悩むといっても、ケモノ憑きになってしまっては、何の意味もないし、よしんば、それを使って友達との間に結ばれる友情など偽りのものでしかなかろう。

 夢から覚めても、しばらく、そのことで頭がいっぱいだった。

…で、肝心の友達の方はどうなったかというと、どうにもならなかった。むしろ何人か減った。

(結論)管狐を貰ってもマニュアルがなければ使えない。


 

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