僕らマージナル
ナツコ
第1章 落合和也の場合
第1話
あのゴムがすれる音に何度。何度心を動かされたことだろう。
この『伝統溢れる進学校』なんて名前に憧れを抱いて、入学したのがほんの三週間前。いわゆる高校受験を無事に成功させた俺は今、体育館へ向かっている。
今はちょうど、部活動入部期間だ。
ずっと決めてた。小学校の時に見た、アメリカのNBAの試合。華麗にダンクを決めていく選手たちに俺は小さいながらに憧れを抱いてしまった。
「俺もこうなってみたい!!」なんていう今考えれば子供らしい夢に突き動かされて、俺は小中とバスケを愛す完全なるバスケ少年へと成長していたのだ。
この高校のバスケ部は有名ではない。強いのか弱いのかすら知らない。
でもここでやりたいことはやっぱりバスケだった。
ダンッ―――
遠くからでもわかる。ボールの跳ねる音。ああ。これだ。
音のする方を見ると、あった。入口だ。ゆっくりと中を覗き込むと、目の前に広がるあの見慣れたコート。
気持ちが高揚していくのが分かった。
「あの…っ!!」
「あの時お前なんて言ったか、覚えてるか?」
「知らねーよ」
「バスケでテッペン取りに来ました!!!!!!、だよ。あん時、先輩たちみんな放心してたぜ」
あー、懐かしいな。なんて俺の前に座って笑っている男。安藤。
あれから二年経って、俺らは三年。最高学年になった。
「いろんなことがあったな」
本当にたくさんのことがあった。数えきれない思い出を、俺はこいつらと共にしてきた。
明日は公式戦がある。俺らにとっては、最後の公式戦になる。
俺らはもう、もうそんなところまで来ていた。
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