チャプター1

第1話.A パート [ 感覚の復帰 ]

1.

2045年のネオン街に雨が朝から降っている、これでまた雨日続きだ。

何もすることがない時の雨天にため息が出る。

わたしはそうして腕につけた「アームストロング」の端末を触りだした。

<おはようございます、マキナ様>

女性のような機械音声がして、ホログラムが出現し、起動する。


「マキナ!おまたせ!」

ダイナーのカウンターから注文した綿飴とサイダーを持ってきた筆崎 水絵が戻ってきた。

「ありがとう、これが綿飴なのね。・・・飴だけあって甘いわね」

と、わたしは珍しそうに綿飴を手に取り、味を吟味した。

水絵は

「マキナは一度も食べたことなかったの!?」

と軽く驚愕する水絵にわたしは

「ない、だから連れてってもらおうかなって思ってさ、来れて良かったよ」

と喜ぶ。

その表情を見て水絵も嬉しくなったようだ。わたしの反応に微笑んでくれている。

水絵の微笑む表情は、自然的だから、幸せだと思っていてくれてるんだって。

わたしのような、「ビジランテ」や「バウンティハンター」の様な、

裏社会の人間が正義感を持つ者に対して、どんな顔をして待っているのか、

それを思う経験をここ3年した私にとってはこのままで良い、この関係が安定した間々で。

外を見ると煌々とした飲料水の電光看板の女性が微笑えんでいる様に見えた。。


-しばらく食休みの間に友人の茶矢とローヌ、シズクと遭遇した。

こんな雨日というのに、この雨雲の主は幸せを運んでいるのか・・・なんて。

互いに軽い挨拶をし、3人の友人を丁度空いている前の席へ座らせ、しばらくの会話を楽しんでいた。


ちなみにドワーフの特徴な小柄な体を持つ茶矢にはスツールのような椅子は

獣人族のローヌや、竜人族のシズクよりも座る時の動作が一つ掛かる。

「そういえば、二人ってホント仲良いよね、 二人は大学の冬休み・・・だっけ?

それってどうしているの?」

遠回しに席の配置に触れつつ、わたしたちの様子を茶矢は伺った。

「そりゃ親しい付き合いをしているからよ。課題とかやることはもうないから、好きなところとか行ってみたかったとこに行っているよ。家に居る時は予習とか絵とか・・・あとはゲームとかアニメを見たりとかかな、水絵と一緒にね」

と二つのの質問を返すように答えた。

「まぁ!いいですわねぇ」とローヌはふふっと笑った。

「あっ・・・、二人とも、そろそろ駅にいかないと乗り遅れる」

と相変わらず大人しげなシズクはローヌと茶矢の袖を軽く引っ張って言う。

「そうだね、わたし達もそろそろ行こうかな」

と瓶を模したコップのサイダーを飲み干したわたしはローヌ達が席を立つのに合わせ、水絵と席を後にし、会計をしに行った。


*


ダイナーの屋外へ出ると、雨が少し弱くなっていた。

そのままわたし達は駅へ向かった。

ローヌ達が乗ろうとしている電車はわたし達が乗ろうとしている電車よりも早い時間に着くようだ。

その時、わたしの勘が囁いたのか、

わたしの目には、駅前の人混みに紛れた怪しい作業員が持つに目が行った。

オレンジ色の作業服に現代の作業員が持ってくるには大きめのダッフルバッグ。

その後ろにいる同じ色の作業服を着ているもう3人・・・いや、三体か。

恐らく男性型人造人間を率いているのが先頭のダッフルバッグ持ちだ。

わたしは使い古したショルダーバッグに右手を突っ込み、PM-9マシンピストルを何時でも取り出せるようバッグの中で握っていた。


わたしの様子に気づいたシズクは

「何かいるの?」と小声で尋ねる。

「オレンジの作業服の、後ろの奴らは恐らくアンドロイド、あいつらがヤバいことしてきたらシズクは皆を安全なところに非難させて」

と言うわたしも緊張と警戒が脳に走る。

バッグ持ちの男は突然バッグを足元へ落っことし、チャックを予め閉じなかったのか

バッグから軽機関銃を出し、無差別に乱射する。

しかし3体のアンドロイドは何もする様子がなく、ただ列を乱さず男の後ろを歩いている。

悲鳴と銃声の中、わたしはマシンピストルを構え、アイアンサイトを男の頭に合わせた。

一般市民と、男に気づかれぬ内に仕留めることを意識して・・・。


・・・ッパァン!!ババババン!!

男は弾丸に頭と胴体を撃ち抜かれ、その場に倒れ、

その途端に男が率いてたアンドロイド達は機動停止した。

わたしはその男が死亡したのかを確認しに走ったが、男はボンッ!と音を立てて溶けていった。

わたしの手に一瞬の違和感を感じた、両手を黒く冷えた何かが上半身を覆っていた。

だがそれはまもなく消えていった。

気づくと男の体は溶けて、残ったのは所持していた軽機関銃と衣類しかなかった・・・。


・・・しばらくして通報を受けた警察や救急隊員達が到着して。

警官達は聞き込みを始め、鑑識官は鑑識を、救急隊員は負傷した市民達を搬送したりしていた。


わたしは先ほどから意識が朦朧しつつ、眠気が圧し掛かるようにうとうとし始める。

・・・目覚めると駐車場に停めてあったわたしの車の相席に座っていた。

わたしの最新型のシボレー・シェベルを運転していたのは水絵だった。

水絵の両手がハンドルから手が離れているのを見て、自動運転になっていることがわかった。

カーラジオからはアレックスの[Youth]が聴こえる。

水絵は左側の運転席から右手でわたしの頭を優しく撫でてくれた。

人間寄りの獣人族である水絵の手は柔らかく、暖かい。

そして、何も言えずにまた眠ってしまう・・・。


また目覚めて車内の窓から見たのは水絵の家の前だった。

自動運転機能で走行していた内に着いていたのだろう。

水絵が

「マキナ、起きてー!

私ここで降りるけど、マキナ大丈夫?

・・・かなり疲れているようだけど、事故のないように気をつけて帰ってね

ありがとう、ここまで運転させてくれて。私は大丈夫だから」

「う、うん・・・今日はゴメンね・・・」

わたしが起きたのをわかると、心配そうに声を掛けてくれて、車のドアを開けて降りた。

 私は運転席に移り、ドアを閉めて家の帰宅路へと車を走らせた。


*

-小鳥遊家のマキナの部屋

わたしはパソコンの電源を消し、

布団の中でアームストロングの端末と携帯を横に置いて横たわっていた。

あの黒い何かはわたしの新しい能力なのか、それとも・・・

そしてわたしはバウンティハンターの面を曝け出してしまった、今はまだ休業中なのに。

友人達と勉学に励んで、自分の技術を磨く普通のような大学生の生活とか・・・日常が変わっていくような気がしてならなかった。

今日の事件のニュースもわたしの顔ははっきりとではないが映っていた。

生体工学の技師としてサイバネティック企業に関わる千鶴"母さん"と

公安局に勤めているマヤ"ママ"に夕飯の時に心配を掛けてしまった。

それに水絵を、彼女の家の前まで乗せていって降ろしたけど、

降りたときは

「送ってくれてありがとう」

とお礼を言ってくれた、

けど水絵は本当はどういう気持ちだったんだろうという気持ちで個人的な罪悪感を感じた。

これからどうする・・・どうなるんだろうと思いながらも眠りについた。


わたしは携帯の音で目を覚まし、電話に出た。

右耳に携帯をあてると女性の声がする、聞き覚えのある声だ。

「復帰するの?するなら明日の10時に「レッド・サークル」へ来て。ある情報を渡したいの。するもしないもあなたの自由よ、小鳥遊マキナさん」

と、こっちは何も言わない内に電話は切れてしまった・・・。

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