EP3.夜道
引っ越しして2日目
僕は夜道を歩くのが好きだった為、よく散歩する事がある。
田舎であるこの町は、夜には薄暗く遠くに行くのは少し自分でも行ける自信が無かったので、近くの公園らしき場所まで散歩する事にした。
らしき場所と言ってるのには理由があって、公園の入口はあるものの中は特に公園というよりかは、だだっ広い空き地みたいな感じだったから、公園と言い切れぬ部分があったからだ。
取り敢えず、田舎の美味しい夜の空気を味わっていた時に、
カサカサ
近くで誰かが何かしている音がした。
暗くて誰がしているかは見えなかったが、僕は気になって近付いてみた。
近付くと女の子が何かを拾っている様に見えた。
「あの…何しているんですか?」
僕が話し掛けると、女の子は驚いた顔をして警戒した様にこちらを見た。
「誰…?」
「あ~この隣の隣に越してきた寺川と言います」
「寺川…お隣さんの?」
「そうです!ってあれ?」
今、お隣さんと言った?気のせいかな?僕は一瞬聞き間違いをしたと思った。
「これは、今何をしているんですか?」
「ゴミ拾い…皆捨てて行くから」
「それをどうして君が?」
「ここ、うちの公園だから。まぁ公園と言ってもお母さんが町の子供達にって作った空き地だけど」
「じゃあ、僕も入って良いのかな?」
「大丈夫…」
段々僕の話し方も砕けてきたけど大丈夫かな?と思いつつ1番気になっていた事を聞いた。
「あの、もしかしてお隣さんの娘さん?」
「あれ?もしかして気付かなかった?」
「いや、さっき「お隣さんの?」って聞いたときから何となくそうかな?とは思ってたけど」
「どうも、自己紹介してなかったけど、橋本 ほたる(はしもと ほたる)って名前です」
「あっ、寺川 夏樹です」
不自然な自己紹介で暫く静かになった間。僕は、帰ろうかなと思った時、
「寺川君はこんな時間に夜道を歩いてて良いの?」
「と言っても、目と鼻の先なんだけど…」
「それもそうだね」
「橋本さんは、こんな時間に良いの?」
「私は、この時間じゃないと駄目なの」
「え?」
この時間じゃないと駄目。この時、僕は単純に驚いただけだったが、もっと深い意味があるなんてこの時は知りもしなかった。
「この時間じゃないと駄目って?」
「それは秘密。簡単に教えられるものじゃないよ」
「ご、ごめん…」
「謝られても…ふふっ、寺川君って面白いね」
「し、真剣に謝ったんだけど!?」
僕はつい恥ずかしくなって、普段出ない様な声を出してしまった。
もちろん、大声ではないが、もっと恥ずかしくなった。
「あ~もう最悪だ~」
「ふふっ、あっそろそろ帰らなきゃ」
「もう遅いしね」
こんな短い会話でも話始めてから1時間近くなっていた。時が過ぎるのは早いなと思った。
「じゃあ、またね。寺川君」
「ま、またね」
これが、僕と彼女との初めての出会い、初めての会話だった。
まだ少し幼かった僕にとっては女の子と話せるのは少し恥ずかしかった覚えがあった。
この気持ちがは、多分1度しか味わえない気持ちだったんだなと今でも思う。
初めて笑ってくれた君の笑顔を今でも覚えている。
to be continued…
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