第1話 のぞく女



みなさんは風呂に入ってる時に、何かの視線を感じたり、気配を感じたりして、なんとも言えない恐さを感じたことはないですか?


俺は、すっごくあります。





小学校高学年まで風呂が本当に恐かった。

だから、兄貴や母に一緒に入って貰っていましたね。


見られるんです。

ひとりで風呂に入ってると、必ず。


ほら?

シャンプーしてたり、顔を洗ったりして目を閉じてる時に、何かの気配を感じたりしたことあるでしょ?


それに気づいたのは俺が小学校1年の時。


普通にシャンプーしてて目を閉じてたら、背筋にいきなり鳥肌が。

全身の毛が逆立つんです。チリチリと。


あぁ。居るんだろーな。

嫌だなーって思いながら、泡を落として顔を上げると


うっすらと開けた風呂の窓から、髪の長い女のひとが見てる。


無表情で、土気色。

まばたきもしない。

ただ、じーっと見てるだけ。


それは、風呂だけの話なので、

俺は見てないふりをして、さっさと身体を洗って、逃げるように風呂からあがるんです。

そしたら、サーっと鳥肌が退いて、逆立ってた毛が元通りになる。



住んでた所は、県営団地。

高校卒業まで長く住んでいました。


部屋は207号室。


そう。

二階なんですよね。

足場なんてまったく無いんです。


ちなみに、窓を閉めていても居ます。


ちゃんと、

ガラスにぴったりと顔をつけて。


一体、彼女はなにが目的なのか、あの風呂に何かあったのか、ぜんぜん知りません。


調べようとも思いませんでした。

しだいに空気みたいに感じていましたからね。


麻痺もしますよ。

彼女とはほんと、ずーっと、何十年ってつき合いなんですから。笑



あぁ。

過去形じゃないのはね。


今もここに居るからなんですよ。









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