ストーカー屋さん

ノータリン

第1話

 今年から大学生で都会の大学に通うことになる。


 田舎の友達との最後の別れ、ほとんどの奴が地元で就職するなかで久保海斗は都会への思いを捨てきれずに大学への進学を決めた。

「頑張れよ!」「あっちからも連絡よこせよ!」「じゃあなーー!」電サyで最後の別れをする際に皆が口々に思いを口にする中には無言ながらも笑顔で手を振ってるのもいる。「次は~~次は~~」大学の最寄り駅を指すアナウンスが鳴るどうやら電車に乗るとすぐに眠りこけてしまっていたようだ。

 大学はオープンキャンパスで行ったとはいえこれから自分が通うのかと思うと思うところがあり胸の中には期待が詰まっていた。ちなみに、家は八階建てのマンション向かいにも同じくらいの高さのマンションが建っていて自然は田舎と比べるとほとんど見受けられない


 7月にもなると大学にも慣れていた。


 都会に大学とはいえやはり県内の生徒が多いようで田舎すぎる地元は興味の的にもなっていたようで友達も簡単に出来、勉強の方も順調に進んでいた。

 そんなある日の帰り道、後ろからつけられているような気がした。一瞬だけ振り向くとフードを被った男のような人がいた。学校からマンションはそう遠くない、偶然道が同じだけなんだろうと思ったが気になったので一応家とは関係のない入ったこともないような細路地に入って行くが、依然として相手は後ろにいるようだった。振り向いてしまいたいが何があるのか分からないと思うとだんだん怖くなって行きたまたま細路地にあった喫茶店に逃げ込むように入って行った。窓際の席に座り犯人の顔を拝んでやろうと思ったがその時にはすでに人影はなかった。

 それから数日間は昨日のことは嘘かのように何も起きなかったのだが、またつけられている気がする。もしかしたら自意識過剰になっているのではと思い一瞬だけ振り向くとスーツを着た長髪の女が歩いていた。(ウワッ!目が合った!)早歩きにして女との距離を取ろうとするが何度か振り返っても女との距離は離れない

 その日も前回使った細道からの喫茶店コンボで撃退したが、その日家に帰るとドアに真っ白な手紙が貼り付けられていた「嘘やろ...」手紙を取る前にもしかしたら今、この瞬間も、その女から見られているのかと思うと急に悪寒が走る。手紙を雑にとって急いで部屋へと入る。

 おそるおそる手紙を開けると中には一枚の折られた紙がそれをそっと開ける

「久保海斗」僕の名前が紙一面にびっしりと書かれていた。その字の形はまるで髪の毛で書いたかのように不安定で真っ黒で久保海斗を無性に不安にさせた。

「こういうのはストーキング行為があった証拠にもなるはず」海斗はそう言って自分に言い聞かせ手紙をしまった。だが不安は拭えない(何故家の場所が分かった?つけられた2回とも細道の喫茶店に入ったじゃないか、もしかしたらもっと前から?いや、もう家の中にいる?)考えれば考えるほどに漠然とした不安が増していく、家にいるかもしれないという不安が出てきたときには鍵もかけずに家を飛び出していた

 急に振ってきた雨も気にせず自転車を走らせた


 その日は漫画喫茶で夜を明かした


 昼頃になってやっと家に帰る決心がついた。もしかしたら部屋は何もなってないかもしれないという一縷の望みを持ちながらドアの前についた。その期待はドアを開けると同時に消え失せた。部屋には本や下着や教科書が床が見えないほどに散乱してところどころ部屋がまだ濡れていた。この前に見た長髪かフードの被った男どちらかは分からないがどちらかが部屋に来て物を散乱させたのかと思うと部屋の中にないることはできなかった。行き場所もないので学校に向かう

 漫画喫茶でも不安に苛まれまともに寝ることも出来なかったため図書館で体を休めていると眼が虚ろになって意識はまどろみに飲まれていった。「なぁ?知ってる?ストーカー屋の話?」「え?あれって本当にあるの?サークル?だっけ」「非公式だけどな」ぼんやりと声が聞こえるどうやら寝ていたようた。まだ瞼が重い何やら話をしているようだがよく聞こえない、がこの言葉が海斗を覚醒させた「あそこってストーカーの被害相談したらヤバいらしいなストーカーが全裸で吊し上げられてネットにまだ画像があるとかないとか」「お高いんでよぉ~?」「なんと今回限りで0円手数料は当社が負担致します。ほかに一切払うものはなく0円ぴったりのお支払いで大丈夫です。もちろん!分割払いもお使いいただけます!」そんなジャパネットたかたごっこをしているカップルに向かって「それって何処にあるんですか!」と海斗がかみついたことは想像に難くない。


 部室はほどんど使われることのないF館の4回の部屋だった


 ドアを開けると男の人が一人でゲームをしていた。それもヘットフォン装着して見知らぬ人に話しかけるのが苦手とされる日本人その中でも最も話しかけにくい部類であるイヤホン・ヘッドフォンの装着それをしていたのだ。もしここで嫌な思いをさせるとないと思うが依頼を断るなんてことも

 こういうとき取る選択肢は二つ、ヘッドフォンも無視して肩あたりにでも手を当てて無理やりこちらに意識をもっていかせるor待つ

 迷いはなかった。ゲームをしている男性の肩に手を当てて目線を動かす男性の目線が画面から一瞬こっちに来た否や一瞬で画面に目線が戻る「えっ?」思わず声が漏れるこの男目線を合わせたにも関わらず何事もなかったかのように画面へと目線を戻していったのだ。ここまで来るとまた難易度が上がるここで無理やり気づいてもらおうとして肩ポンを続行すると「はぁ?今ええとこでもうちょいで終わるから目線を戻したの分からんの!?」とブチ切れを食らう可能性もあるが、ここで待つという選択肢をとっても内心で(あーコイツ一回目線戻されただけで諦めるような奴かよええわ無視しよ)と思われたり(モンスターハンターでのオンライン部屋で最初の挨拶をよろしくお願いします。からよろしく!に変えればフレンドリーな感じになるやろなんて考えをいまだに持ってる勘違い野郎が2回目の肩ポンを待っているかもしれない)

 どうせ択だ考えても仕方がないと思い二度目の肩ポンをしようとした瞬間男はヘットフォンを外して「あ~~づかれた」なんて声を出しながら首の骨を鳴らしながら言った。 「ようこそストーカ屋へ」男は自分を南雲と名乗っていた


 夕方なのに陽の一つも差し込まない暗い教室だった


 ストーカー屋には3つのルールがあると言う

 1.順番優先 これは言葉の通り先に来た依頼主の依頼が優先されるということそれに関してはストーカー被害の依頼はここ最近なく海斗が一番だったため問題なし


 2.ここに依頼した依頼内容は秘匿とすること


 3.何があっても責任は一切負いません


 というソシャゲの利用規約のようなよくあるものだった


 南雲が一番気がかりなのは一度目に見た時がパーカーをかぶった男なのに対して二度目がスーツの女の点可能性としては二重ストーカーの可能性も考えられる。二重ストーカーの場合ストーカーどうしが鉢合わせた時にどういうことが起こるか予測もつかない南雲は事態は早めに収束させるべきだと考え海斗に家へ手紙を取りに帰るように言う海斗は無論断ったが説得(物理)の前に屈した

 海斗は家へ戻る。恐怖を少しでも拭うために家中の電気という電気をすべてつけてから手紙のあるリビングへと向かう散乱していた衣服などは前見た時と変わりなかった。手紙を入れたケースを開けるものの手紙が見つからない。棚を一段間違えて開けたか?と思い他の段も探すが出てこない。考えうる可能性は一つストーカーが持って帰った。教科書だけでなく衣服も散乱し下着も何着かなくなっていた為性的欲求を満たす目的での犯行かと思ったがそれはあくまでも副産物おそらく最初からこれが目的だったのだろう。南雲に電話を掛け事の次第を伝えると「分かったわ、とりあえずこっちにもいろいろあるから今日は待機しといてまた明日来てや」うまくいけば南雲の家に泊めてもらおうと思っていた海斗は「あのっ、」と言い出すがその時には電話は切れていた。

 とりあえずの危機が家の中にいないことを再確認してから「片づけるか…」片づけを終わらせ二日ぶりのお風呂に入ろうと思い、体を流しているとイマイチ水の流れが悪い(トラブルか?不運は重なるともいうしなぁ)と思い排水溝を覗いてみるとびっしりと髪のようなものが詰まっていた「うわっ!」思わず声を上げる見ているだけで気分が悪くなったので換気扇を回して風呂を上がろうとしたときだった天井から大量の髪の毛が降ってきて海斗の顔にべったり張り付く。換気扇にも髪の毛が仕込んであったのだ。その時海斗の中で何かが切れたそして「クソがぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」部屋中を暴れまわった。怒り、悔しさ、恐怖、溜まっていたものを全て吐き出した。

 暴れ終わると疲れと共に死んだように寝た


 次の日、朝から学校に行く気力も無かったがストーカー屋にだけは行かないとと思い昨日と同じ時間にあの部屋を訪れた

「機能がご苦労さん今日は狂でやってもらうことがある。でも、これは危険性が高いもんや」

 一番大事なこととしてストーカーが誰なのかどうかというか知人であるのかそれとも全く見知らぬ人間なのかどうかということを自分の目で見て判断しろと南雲は言う


 もし知人の場合がストーカーの心理も想定しやすい


「基本的にストーカーになる第一歩は気になるけど喋りかけられない。これから始まる。周りに人がいると話しかけられない人や一対一でも話せない人、様々な形があるが始まりはそこからだ。知人ストーカーには悪意のないものがとても多い、喋りかけることは出来ないが姿は見ていたいと言う、片想いの典型的な思考が教室の中で目で追いかける行為から教室外にも繋がっていく、知人ストーカーに多いのは悪意が無い。傷つくことを恐れ歪み曲がった形ではあるがその『好き』という気持ちは本物のことが多い。バレるとまずいということはだけはよくわかっててるので本人には分からないようにするものの見えていないところでは何のためらいも無く本性を発揮することができるタイプの人間。最初はあった自制心それも行為に及ぶたびに薄れていき最初はバレないということを第前提をしておいて行っていたにも関わらずより大きな刺激と欲求を満たすためにそれも忘れエスカレートしていく行為最終的には全てを欲して自滅を招く。そしてようやく気付く「ああ、どうしてアソコでやめておかなかったんだろう」とそこまで行ったストーカーには「始めからやらなければよかった・初めからちゃんと告白していれば」なんて思いは微塵もない。やったからこそ得られたものがあり、初めから告白して純粋に恋愛するなんて道はとうに消え失せているから」

「そんなの頭おかしいでしょ。」海斗は声を漏らす。「いやいや、こっちはまだマシな方な、むしろ知人でもなんでもないのにストーカーになる方が悪質やで、じゃあ、計画について話すから」


 計画実行


 それから3日たった。計画どうり3日間は家に帰るどころか学校にすら行っていない満喫で寝てジムで体を洗う日々が続いた。自称ストーカー専門家の南雲曰く計画では今日ぐらいにはストーカーのどちらかが家で張っている。その家で張っている数日間の間に顔を見て知人かどうか判別できるか否かに全てがかかっているという。

 雨の中、漫画喫茶から自転車を走らせ自分の部屋あたりからは視認できない様に徒歩で回り道をしながら住んでるマンションへと向かう。向かいのマンションの階段を一段ずつ上がる。もしかしたらこの行動自体が予測されているケースも少なくない、部屋は三階少なくとも四階までは上がる必要がある。一階に誰もいないことを確認してから二階へ...誰もいない。次に三階...誰もいない。一番可能性が高いのは次の四階、護身用に与えられたスタンガンを握りしめながら階段を音を立てないようゆっくりと四階へ...人影は見えない。なら、この双眼鏡でドアの前で待ち伏せしているであろうストーカーを確認するだけそれを報告するだけ。

(やっとだ、やっと、この長い地獄から解放される!)

 海斗は双眼鏡に目を覗かせると見えた女の姿長髪でスーツの女「顔が俯いていて見えない...」

 女が動くのを待つしかない。十分ほどたったが...動く気配はない、汗が滲み出てくる二十分経過...女が顔を上げた。

 震えながら汗を流す体を抑えながら女の顔を確認することに全神経を注いだその時、目に映った物は女の顔...だが見ている先がおかしい、先程までずっとうずくまって海斗の帰りを待っていた女が向かいのマンションにいる海斗を見ている。まるで最初からそこにいることを知ったいた様に、

 抑えていた体中の震えと汗が止まらない反射的に顔を隠したがもう遅い確実に見られただろう(落ち着け...落ち着いて逃げるんだ!女が来る前に!)心の中で強く唱えるが心臓の動きは依然として異常な速さで脈を打ち、足...体中の震えも止まらない、汗も額から止めどなく溢れ出てくるどころか涙まで出てくる。海斗はその場から動くことが出来なかった


 ガラガラガラと音を鳴らして立て付けの悪いドアを開く音が聞こえる。

「どうだった?」椅子に座った男が聞く。この声は海斗に自分のことを名乗った男の声だ。「うまくいきました。本当にありがとうございます。で、次はどうすればいいんでしょうか。」と長髪の女が答える。

「まぁ、うちは順番優先やからなちょっと心が痛むけどしゃーなしやで...ってかその成りで部屋に入ってくるなと前にもゆったやろ」「ごめんなさい。」


 長髪の女は頭を掴んだと思うと髪を外した。

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ストーカー屋さん ノータリン @bjl

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