俺の友人達には問題がありすぎている件8

 放送室に乗り込む事が決定した後、楽斗含む六人は時間が残されていないのにも関わらず作戦会議を始めた。

 というのも、放送室は六人全員が乗り込むにはあまりにも狭すぎるため、扉を壊し真っ先に突撃する前方メンバーと、前方メンバーが圭子けいこと戦っている間に放送を止める後方メンバーを三人三人で分けるというものだった。

 結論を言うと、楽斗がくと宗吾そうご大毅だいきと共に前方メンバーに選ばれた。ちなみに楽斗は宗吾や大毅と違い男子だからと選ばれたわけではなく自主的に立候補した。


 ━━━誰も楽斗を男子扱いしていなかったことは内緒である━━━

 

 ぶっちゃけ言うと、楽斗は誤魔化しが効かず実行犯に成りうる前方メンバーよりも、いくらでも誤魔化しが効く後方メンバーの方が良いと考えたのだが、リスクを背負ってまで立候補した理由は主に二つある。


 一つは、前方メンバーが中々決まりそうに無かったこと。

 これに関しては当たり前だと思う。自ら望んで実行犯になりたいと思うものはいないだろう。だが、時間がない状況でそんな事に時間を使っては勿体ない。時間ロスを避けるためには誰かが立候補するしかなかった。


 二つは、相手が超がつくほどの問題児、圭子だということだ。

 戦闘能力というと中二臭いが、いくら戦闘能力が高い圭子でも、同じく戦闘能力が高い宗吾と大毅の二人と戦えば敗北は免れないだろう。

 それはいい。しかし、厄介なのは追い詰められた圭子が悪足掻きをするかもしれないと、最後に強烈な爆弾発言を飛ばしてくるのではないかと。

 そうなったとき、何も知らない宗吾と大毅は流石に口を塞ごうとは考えないだろう。つまり、チェックメイト。今日の苦労も水の泡。すぐさま社会的な死が訪れることだろう。

 それだけは嫌だ。阻止しなければ。


 以上の理由から楽斗は前方メンバーに立候補したのだった。



 放送室に着いた前方メンバーは、その固く閉ざされた扉の前で最後の確認をしていた。

「さぁ、準備はいいか?やるべきことは分かってるよな」


 大毅の言葉に楽斗と宗吾は頷き一つで応じる。

「あぁ、問題ない」

「後方メンバーはまだ揃ってないけどな。まぁ、間に合うと思うが分からんな。あいつら体力無さすぎだからな。なぁに、間に合わなかったら俺達だけでやればいいさっ!」


 楽斗が同意し、宗吾があっけらかんに笑い飛ばす。

 すると、その場に居た唯一の後方メンバーが面白くなさそうに眉をひそめながら反論した。


「そりゃ、あなた達の全力に付いてこられる女子なんて居ないわよ」

流音ねえさん、地味に自虐してね?」

「そういう趣味なんだろう。気にしてあげるな、人の趣味はバカにするものじゃないぞ?」

「Mだったのか......長い間友人として付き合って来たけどこれは知らなかったぞ。まさしく未知だな!」


 矢継ぎ早に言葉を返され、怒りか、それとも本当にそういう趣味だったのか羞恥でか、流音の顔がトマトのように真っ赤に染まる。


「Mなわけ無いでしょ!」

「じゃあそろそろいくぞ!」

「「おー!」」

「す、スルー!?ま、待ちなさ━━━くっ......これが終わったら覚えてなさいよ!」


 流石に場をわきまえているのか、流音はそう言って少し距離をとる。

 それと同時に宗吾と大毅がドアに向かって、宗吾が拳で、大毅が蹴りで強烈な一撃を放った。


 ━━━轟音。


 扉はその一撃に耐えることができず、物理法則に従い、勢いよく放送室の中へと吹き飛んだ。


 だが、それも一瞬のこと。


 吹き飛んだ扉は放送室の物を壊すことなく、進行していた方向からの衝撃でバラバラに砕け散った。


「やはり来るとは思っていたが、待ちくたびれたぞ。さぁ、勝負といこうか」

「なんでこいつこんなに張り切ってんだよ。何か怖えーよ......」

「何怯えてんだ宗吾。そ、想定内の範囲だろ......」


 バラバラに壊された扉の奥から威厳たっぷりで現れた圭子に、若干引き気味ながらも構える宗吾と大毅。


 

(ラスボスかよ!!ラスボスとの決戦かよ!!!)

 いつの間にか、彼らからかなり距離をおいていた楽斗はその光景を見てそう思った。


「なんであなた前方メンバーなのに私の横にいるのよ」

 横から聞こえる姉の声には気づかないフリをしながら。

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