俺の友人達には問題がありすぎている件6
(駄目だ。早く話を聞きたいけどこりゃ当分使い物にならないな)
流音を見続けていた楽斗は、そう確信した。
頭を抱えてから五分は経っているはずなのだが一向に流音が立ち直る気配はなく、むしろさっきより酷い状態になっている気がしたのだ。
(早く立ち直ってもらわないと放送聞かれそうでイヤなんだが、無理矢理学校から出そうとすると逆に怪しまれそうだな......仕方ない。もう少し待つか)
楽斗は、落胆の息を吐いて壁に腰を掛けた。そして慣れた手つきで携帯を開く。目的は勿論、暇潰し......ではなく、友人達の返信を確認することだ。
(姉さんのはさっき開いたからな、メールが最新の順に開くか)
余談だが、楽斗は友人毎にフォルダを作っているため、いわゆるコミュニケーションアプリと同じように、誰が何件送ったか分かるように設定している。
そんなめんどくさいことしないでコミュニケーションアプリを使えよ!と、思う人もいるかもしれないが、ここで忘れてはいけないのは楽斗の友人達がイレギュラー要素をバンバンと詰め込んだような存在だということだ。
どういうことが率直に言うと、奴等の半分はコミュニケーションアプリをインストール出来ない世代前の携帯━━━所謂ガラケーを愛用しているからメールでしかやり取りする方法がない。
何故愛用しているかは楽斗にも知らない。この学校の十不思議ってやつだ。
━━━普通は一つの学校にあるのは七不思議。と、言われているのだが、この学校では七不思議ではなく、十不思議と言われている━━━
(さて、姉さんの前は......
フォルダに掛かれた差出人を見た楽斗はメールが1件だったことに何故か若干喜びを覚えながら、メールを開いた。
【from】ohtorisougomitigahoshi@abcd.mail.ne.jp
【件名】ふはははは
【本文】楽斗、お前の誘いは素直に嬉しい。しかし、何故今日誘ったのか理由が分からない。だから俺はこう推測した。誘わなければ、俺を校門に呼ばなければいけない事態があるのだと!校内で何かが起きるのだと!つまり、未知!あぁ。俺の頭が未知で満ちていく。未知満ちていく。すまないが俺は未知を体験するため、お前の意に反して校内に残ることにした。アディオス!
「死ねぇぇぇぇ!!!」
楽斗は、今すぐにでも携帯を地面に叩きつけたい衝動を必死に抑え、代わりに怒声を発した。
「はぁはぁはぁ......なにがアディオスだ!ふざけんじゃねぇよ!!!次あったらぶっ殺す!」
一方、流音は......まだ頭を抱えていた。
「立ち直るの遅すぎだろ......まぁいい。次だ次」
次のメールの送り主は
とりあえずメールを開く。
そこには
【本文】断る
「......ははは」
乾いた笑いが込み上げてくる。
確かにこれは大毅らしい文だな、と。
一文で断られると長ったらしく断られるよりも諦めがつく。......ついてはいけないのだが。
気を取り直して、次の差出人、
【件名】んー( ・◇・)
【本文】がっくんがメールなんて珍しーねΣ(´□`ノ)ノ!何か裏があると見たよ(゜∇^d)!!って、ことで私は帰宅途中だったけど今すぐ学校に戻ることにするよヽ(・∀・)ノいやー何があるか楽しみですなー(^-^)v
楽斗の肩が怒りでプルプルと震える。それに応じるように携帯を持つ手も当然ながら震える。
「......殴りたい。百発殴りたい。菫にメールを送ってしまった過去の自分と菫を殴りたい。この顔文字見てるとイライラするぅぅ!!」
爆発寸前な怒りを唇を強く噛み抑える。
「次は誰だよ......」
もはや気力が無くなった楽斗は、次の差出人を見て、絶句した。
【件名】私だ私!
【本文】はっはっは。私にメールを送るなんて失敗したなプリティーガール。案ずるなあと二十分くらいで準備は終わる。バッチリ決めてやるから任せておけ
差出人は圭子だった。
いや、そんな事よりも
「に、二十分だと!?これ送られたのがええっと......十七分前だから......あと三分!?」
こうしちゃおられない。あと三分で校舎に残る問題児達を外に出さなければならないのだ。
「いくぞ!」
「えっ、え?」
連中がいる場所は分かっている。まだ、探していない場所。それは屋上しかない。
楽斗は頭を抱えている流音の手を引っ張り廊下を駆け出した。
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