俺の友人達には問題がありすぎている件3

「はっはっは。

 占拠と言ったら戦いだろう?戦いと言ったら甲冑。だから私は甲冑を着てきたに過ぎん」

「お前の考え方は何か根本的にずれてるんだよ!この問題児が!」


 やれやれと言った感じで、どこから持ってきたのか鉄仮面を装着しながら説明する圭子けいこに半分本気でキレる。


「ふむ、問題児は君もだろ?楽斗プリティーガール。君は中学時代その容姿でいくつもの男を悲しませた?

 おや?どうしたんだ、そんなに顔を真っ赤にして。照れてるのか?」

「怒ってんだよ!!!大体、俺の場合は誤解する奴が悪いんだよ!俺はきちんと学生服を着ていたはずだ!なのにも関わらず性別を誤解してくるなんて失礼にもほどがありすぎるだろ!腑に落ちねぇよ!」

「......鏡で自分の顔を見てくるといい。そして、その容姿で女の子だと思わない人は居ないってことに気づけ。そして、ついでに自分の本当の性別についても気づいたらどうだ?」

「男だって言ってんだよ!」


 激昂する楽斗に、どうどうと馬を落ち着かせるような仕草を取る圭子。

 そして、楽斗の怒りが鎮火し始めた頃、圭子は何かを思い出したかのように面越しでも分かるぐらいハッキリと笑った。


「......さて、じゃあ占拠してくるとしようか」

「させるものか」

 

 すぐさま、背後に放送室の扉を構え、中に入れさせないようにする。

 しかし、圭子は甲冑を着ているとは思えないほどのスピードで急接近して、その腰に差している模造刀を抜いた。


「ッ!!?あっぶねぇぇ!」

「ほう。可愛い顔してやるじゃないか!」


 迫り来る模造刀を紙一重で避けた楽斗に圭子が称賛の言葉と共に凄まじい剣筋を浴びせる。

 

「だてに何年も友達やってる訳じゃないってことさ!」


 楽斗は、思いもしなかった称賛に、ぶっきらぼうに答えながらも、しっかりと迫り来る刀を避けつつ、更に器用にも鼻の下を擦りながらドヤるという高等テクニックを見せつけた。


 思いっきり照れていた。


 しかし楽斗にしてみれば、それは仕方がないことだった。あの圭子に誉められたのなんて、それこそ何年ぶりって話だったからだ。


「━━━だが詰めが甘いな楽斗プリティーガール

「は?......って、ええええええ!?」


 見れば、いつの間にか楽斗の元居た位置と圭子の元位置が入れ替わっていた。つまり、楽斗の後ろには階段があり、圭子の後ろには放送室があるという現状だ。


 なんだと......と、目をひん剥いて驚く楽斗をよそに、


「はっはっは!じゃあ失礼するぞ」


 鍵がかかっていなかったのか、圭子はやけにすんなりと開いた放送室に入り込むと、ガチャリと中から鍵を閉めるような音がした。


「あっ......」


 慌てて放送室のドアノブを掴むも、もう遅い。ガチャガチャと虚しく音が響くばかりで扉ガール開く様子は一向にない。


「嘘だろぉぉぉぉ」


 楽斗は多少だが、目から涙を流した後、糸が切れた操り人形のようにドサリとその場に倒れた。

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