姉より可愛い弟なんて存在する筈がない
るー
姉より可愛い弟なんて存在する筈がない
「姉より可愛い弟なんて存在するはずがない」
これは姉さんの口癖だ。どっかで聞いたような気がするのは多分姉さんが何かの台詞を自己流に改造したからであろう。
姉より可愛い弟なんて存在するわけがない。
その通りだと思う。
そもそも性別が違う時点で姉より可愛い弟なんて存在するわけがないのだ。
ていうか、根本的に男の娘なんてものはデュフデュフと笑う豚共が作り上げた二次元の世界にしか存在しないはずの存在。
Q:SNS等で女ぶってる男は違うのか?
Α:もちろん違う。それはただのネカマだ。
Q:では、男の娘は存在しないのか?
Α:デュフデュフ豚の心の中以外では存在しない。
そう、存在しないはずなんだ────なのに何で...... 。
「あ、あの。ずっと前から好きだった。僕と付き合ってくれないか?」
何故こうなった!?
この物語の主人公こと
四月九日。高校生活一年終え、新年度を迎えて一週間が経つか経たないかという微妙な日に、楽斗は去年、そして今年も同じクラスになった男子に呼び出しをくらっていた。
呼び出しといっても直接呼び出されたわけではなかったが。
実は今日の朝、登校時、下駄箱に手紙が入ってあり、開けるとそれはそれは書道の先生が書いたのではと思うほど達筆な字で「今日の放課後、校舎裏にてお前を待つ!」と書かれていたのだ。
手紙の書き方が完全にあれだったので、一瞬告白かと心が浮き浮きしたのだが、それも一瞬のこと。差出人見た瞬間のあの絶望感と来たら、それはそれは色々な意味で素晴らしいものだった。
にしても、男からこんな告白めいた手紙を貰うとは予想だにしなかった楽斗は、多少は嫌な予感を感じながらも、男が男に告白する筈がないと考え、これは告白ではなく男同士の対決、すなわち『決闘』の誘いなのだと捉えた。
正直に言うと争い事は苦手だから行きたくなかったが『決闘』から逃げたら男の恥だと昔読んだ何かの小説に書いてあった覚えがあったので、今日の授業及び放課の時間の全てを行くか行かないかの判断を決めるのに消費することになったが、結局は覚悟を決めて楽斗は校舎裏に向かうことにした。
楽斗にとっては自分の体が傷つくより男の恥だと言われる方が苦痛なのだ━━━差はほんの少ししか無かったが。
そして覚悟を決めた結果、文章の初頭に戻る。
当の張本人、呼び出し人、
そんな大野を見て楽斗は本気で「だ、誰だよこいつ......」とドン引きしていた。
というのも大野はクラスでは成績優秀、性格真面目という優等生キャラを演じており、こんな気色悪い動きをするようなキャラでは無かったはず......だった......。
正直ぶっちゃけると、楽斗はそんな彼に彼に憧れを抱いてたりもした。しかしこんな姿を見てしまえば百年の恋も冷める。元々恋なんてしてなかったがなんか冷めた。
いや、今はそんなことはどうでもいい。
問題は今の現状だ!
大野は唖然としてる楽斗を見て、もしかして先程の告白が聞こえてないのでは?と思ったのか
「ずっと前から好きでした。付き合ってください!」
と再度吐き気を催すような死の宣告をしてきた。
多少言葉が優しくなったのは気のせいだろう。まぁ、優しくしたところで答えは変わらないが━━━と、そこまで考えたところで脳に一つの可能性が浮上した。
この男......もしや姉さんと自分を間違えているんじゃないか?
楽斗とその姉、
それは、流音が男寄りの容姿をしているわけではない。むしろ流音は美少女の分類に含まれると思う。身内贔屓ではなく大マジで。
問題は楽斗がそんな美少女と良く似ているという点だ。ははは......全く持って笑えない。
どのくらい似ているかというと二人同じ髪型にして同じ服を着て並んだら古くからの友人達、そして親でも見抜けないほどだ。
体型で気づくのでは?と思う人といるだろうが答えは否だ。流音は発達途中というか何というかで、女性らしい部位が出てない。また、楽斗も楽斗で身長が思うように伸びず、男子にしては比較的小柄な体型をしている。そのため、どうやっても体型では判別がつかなくなっていた。勿論、全裸になれば分かると思うが
と、まぁ。以上のことは髪型を揃えた場合なので、揃えてない通常時ならそんな心配はいらないのだが。
ついでに言うと、流音は平均成績をキープしている自分とは違い、常に上位に食い入るほどの優等生だ。また、性格も驚くほどに似てない。何が言いたいのかというと、要は外見以外では全く似ていないため見分けるのはかなり容易だと言うことだ。
当たり前だ。
一卵性だからといって性格や才能まで似たら、そんなのはもうSFの世界だ。
━━━と話が長くなってしまったが簡単にまとめると、胸がいくら無いとはいえ、そんな才色兼備の流音に大野が好意を寄せてもおかしくないということだ。
こうして出された事実を組み合わせて出来た結論はこうだ。
この
そこまではOKだ。
だが、ラブレターを下駄箱に入れるとき同じ名字の楽斗と間違えてしまった。
可哀想に。
この
だが、このままではいけない。このままだと流石に大野が可哀想だ。
楽斗は、また覚悟を決めて大野に真実を告げることにした。
「大野。君は勘違いをしている。俺は天宮楽斗。天宮流音ではない」
きちんと伝わるように一文字一文字ハッキリと伝える。
すると大野はきょとんとした顔で
「知ってますよ?それがどうしましたか?」
(ッ!?何と言うことだ。こ、この男、姉さんの名前と俺の名前を間違えてやがるぞ!!告白するくらいだったら名前くらい覚えておきやがれ!)
楽斗は半分呆れながらも慈悲の眼差しで、優しく大野の肩を叩いた。
「大野、俺は天宮楽斗。男だ。
そして君が惚れているのは天宮流音。女だ。分かったらさっさと姉さんのところ行って告白してこい」
「ハハハ。やだなぁー!楽斗くんは勘違いをしているよ。」
は?
「は?」
大野は肩に乗っていた楽斗の手を自分の両手で包むように握ると、満面の笑みで爆弾を投下した。
「僕はちゃんといったじゃないか。楽斗くん君が好きだ!愛してる」
その瞬間、楽斗は女子顔負けの甲高い悲鳴を上げた。
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