第19話 この空間落ち着かない!!
「じゃあね、おねえ。私は教室行ってるね」
「うん、ありがとう」
「先生にも言っておくよ」
「うん……あ、大丈夫かな?ケイ先輩が言ってくれてると思うし。
違う組のHR中に入りづらいでしょ?」
「あー……確かに」
「だから、大丈夫よ」
「ん、そっか」
ちょうど朝のHRの時間。
こんな時間に自分の教室以外にいる、ってのもなんか変な感じ。
学校にはいっぱい人がいるはずなのに、妙に静かで。
雨の音しかしない。
サー……
「くしゅんっ」
って、浸っている場合じゃないな。
あー、下着までビショビショだー…。
下着の替え、は流石にないよねぇ。
うーん、とりあえず拭くだけ拭いて、冷たいまま着るしかないかぁ……。
コンコンッ
「すばるん? 開けてもいい?」
「あ、はい、大丈夫です」
ガラガラッ
「着替えの場所わかっ……えっと、すばるん?
女同士だからいいけど、ちょうど全部脱ぎ終わったところは、大丈夫とは言わないんじゃないかしら……?」
あ。
そりゃそうだよね。
「あ、あははは、すいません……お見苦しいものを……」
変なことを考えていたせいか、うっかりしていた。
「……すばるん、って、思ったよりも余計なお肉がついてなくてキレイな体してるのね」
「へ!?」
な、な、な、な、なななななな。
えと、あの、その……こ、これはどう解釈をしたらいいの!??
「……あ! いや、その、ごめんなさい。
変なことを言ったわ……」
思わず、って感じなのかな。
顔を真っ赤にしてるケイ先輩はなんか可愛い。
……それどころじゃないけど。
「いえ、その、大丈夫、です……」
サーー…………
雨の音が響く。
「その、変な意味じゃなくて、ね。
あんまり運動をしているイメージがなかったから……」
「……それって、もう少しぷよぷよしてると思った、ってことですか??」
「……そうとも言うわね」
「ひどーいー!」
「ふふふ、嘘よ」
「うちは犬を飼ってるので、毎日のお散歩がちょうどいい運動になってるぽいんですよー」
「ああ、そういうことなのね」
よっぽど運動してないように見えたんだろうか……。
実際してないけど……。
「すばるん、Mサイズでいいかしら?」
生徒会室の片隅にあるロッカーを開けながら、ケイ先輩が聞いてくる。
あのロッカーに入ってたのか。
そういえば、あそこ開けたことなかったな。
他にも開けたことない場所あるけど、何が入ってるんだろう。
今度聞いてみよう。
「あ、はーい、大丈夫です~」
なゆが保健室から借りてきてくれたタオルは、すっごくふわふわしてて気持ちよかった。
これ、うちのバスタオルよりイイヤツなんじゃないだろうか……。
よし、大体拭き終わったかなぁ。
「はい、これ。
あと、下着も。
あの様子だと、下着もダメでしょう?」
おお! よかった。
「そうなんですよーーー。
冷たいのまた着ないとかなぁ、って覚悟決めてたとこでした」
冬ほどではないとはいえ、梅雨時期なだけあってそこそこ気温は低いしね。
さすがに、何も着けないわけにもいかないし。
助かった。
「ショーツは新品だから安心して。
ブラは……私の体育用の替えしかなかったんだけど、それで我慢してくれる?」
ケイ先輩の!?
「もちろん、ちゃんと洗ってあるわよ?」
「え、えと、はい、ありがとうございます!」
そういう問題じゃなくて!
じゃあどういう問題? って聞かれると困るんだけど。
白地にグレーの入ったシンプルなスポーツブラ。
地味すぎず派手すぎず、肌触りもいいし、ケイ先輩って感じがする。
……いざ身につけようとなると、ちょっとドキドキしてしてきた。
「もうっ!
そんなに緊張されると恥ずかしいから、普通に着てってば!」
「ご、ごめんなさい!」
うわああああああ。
どうしよう、この空間落ち着かない!!
今すぐ逃げたい!
服着てないけど!!
「終わったかしら?」
「はい、なんとか!
何から何までありがとうございます」
「いいのよ。
さすがに放っておけないしね」
若干目線を合わせてくれないけど。
でも、私も今は合わせづらいから、かえってありがたい。
うう。
……あ、そだ。
「ケイ先輩、甘えついでに一つお願いしてもいいですか?」
「ふふ、なぁに?
私にできることならいいわよ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます