第4章 レイニーレイニー

第18話 雨続きで嫌になっちゃう

「おはよーございまーーす」

 うぅ、朝からヒドイ目にあった……。

「あら、すばるんおはよ……って!どうしたのその格好!?」

「ケイせんぱ~い……」

 そうなのだ。

 学校に着いたときの私は、ずぶ濡れだった……。


 ――その日の朝。


 窓の外を見ると、やっぱり雨だった。

 ここの所、ずっと雨続きで嫌になっちゃう。

 梅雨だからしょうがないんだけどねー。

 むぅ、髪もハネるし、じっとりしててやだなぁ。

 早く夏……も、じっとりしてるから、通り越して秋にならないかな。

 ああでも、夏は星がキレイなんだよね~。

 みんなでどっかに見に行きたいな。


「おねえー?

 のんびり朝ごはんもいいけど、雨だから少し早く出ないとだよ?」

「え?」

 特にゆっくり食べていたつもりはないんだけど、考えごとをしていたら思った以上に時間が経っていたようで。

 時計を見たら、もう出なきゃいけない時間になっていた。

「わわ! ほんとだ!!

 もっと早く言ってよー!!」

「おねえがのんびりしすぎなの」

 すでになゆは出る準備万端! って感じで。

 慌ててパンを飲み込んで、カバンを引っ掴む。

「い、いってきまーす!!!」


 大急ぎで家を出たおかげで、なんとかバスに乗り遅れずに済んだ。

「うう……つぶれるぅ……」

 雨の日は、普段バスを使っていない人も乗ってくるもんだから、いつも以上にぎゅうぎゅう詰めになっていた。

 ジトジトもすごいし……あ、折角押さえておいた髪がまたハネた……。

「おねえ、大丈夫?」

「うん、だいじょぶーぅ」

 早く着いてーーー。


『次は流星大付属前~流星大付属前~』

プシュー


 空気の抜ける音と共に、やっとバス停についた。

 うちの学校の生徒もいっぱい乗っているので、雪崩れるようにみんな出ていく。


ドンッ


「うわっ」

 っととと。

 もう、そんな押さなくても大丈夫だから、みんな落ち着いて降りてよー!

 危うく転びかけてしまったじゃないか。


ピッ


 定期を機械に通して、階段を降りる。

 あー、これ、さっきよりだいぶ雨が強くなってるなー。

 バスを待ってるくらいの時は、昇降口まで傘なしで行けるかな―、って思ってたんだけど、これはダメだな。

 バスを降りた所で傘をさそうとした、その時だった。


「きゃっ!」

「え?」

 バスの出口から短い悲鳴が聞こえたと思って振り向くと、ちょうどなゆが降ってくる所だった……。

 ……あぶない!


ドサッ


「あ、あぶなかったー。

 大丈夫? なゆ」

「ありがとう、おねえ」

 なんとか、なゆを受け止めることができた。

「ったく、さっさと降りろってんだ!!」

 そのなゆの後ろから、知らないおじさんの怒鳴り声が聞こえる。

「オラ! どけ、邪魔だ!」


ドンッ!


バシャッ!

バキッ!


 そして、よくわからないまま、私はなゆごと突き飛ばされていた。

 ……え?

 急展開すぎて全然頭がついていかない。

 唯一理解できたのは、お尻の下に水たまりがあってビショビショになった、ってことと、なゆは濡れずに済んだ、ってことだけ。

 あ、それともう一つ。

 手の下でくの字・・・に折れ曲がったお気に入りの傘は、もう使えなさそうだってことも……。


「ちょっとお客さん!!

 危ないですから、順番にゆっくり降りて下さい!!」

 バスの運転手さんがマイク越しに注意をする声が聞こえる。

「おじさん!! 女の子突き飛ばしてなにその態度!!」

「なにそれ、アリエナイ。サイテー」

 周りの女の子たちの怒る声も聞こえる。

「けっ!うるせぇ!!」

 更に怒鳴るおじさんの声。

 最終的に、守衛さんが出てきた所でおじさんは逃げていった。


「もー、なんなのあのおっさん、信じらんない。

 大丈夫~?」

「あ、ありがとうございます」

 周りにいたのは知らない子たちばっかりだったけど、私の代わりに怒ってくれたり、心配してくれたり。

 こんな時に変だけどちょっと嬉しかった。

「おねえ、びしょ濡れになっちゃったね」

「ああ、うん。

 なゆが濡れなくてよかったよ」

 さあ、私はどうしようかな。

「おねえのおかげ。

 ありがとう。

 だけど、このままじゃおねえ風邪引いちゃう。

 ……うーん、先生に相談してみようか」

「そうだねー」


 ――で。

 昇降口に来た所でケイ先輩に会ったのだった。

「とんだ災難だったわね」

「そうなんですよ~。

 とりあえずなんか着替えとかないかなーって、先生に相談しようと思ってた所です」

「着替えなら、なんかのトラブル用に生徒会室に予備の制服が置いてあるわよ。

 先生たちには話してきてあげるから、すばるんは生徒会室行ってなさい」

 ずぶ濡れのままウロウロしたくなかったので、ここで先輩に会えたのはラッキーだった。

 ほんっと、ケイ先輩は頼りになるなぁ。

「なゆちゃんは、保健室でタオル借りてきてあげて」

「はい。

 おねえ、先行ってて」

「うん、ありがと~~」

 ふぅ、なんとかなりそうでよかったー。

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