第8話 星座部と言えなくもない

「失礼しました~」

「すばるちゃん、よかったらまた遊びに来てね!

 いつでも来ていいからね!」

「あ、はい~」

 星座部の見学を終えて廊下に出たら、部長のアテナ先輩がわざわざ見送りに出てきてくれた。

 すごく丁寧だし、優しかったんだけど…。

 うん、ここは違うな、と。


「あら、アテナ……と、すばるん?

 どうしたの、こんな所で」

「ケイ先輩」

「ケ~イ~?

 『こんな所』とは失礼なー」

 そこに、ちょうど廊下をケイ先輩が通りがかった。

 喋りっぷりを聞いてると、お友達なのかな?

 同じ2年生だしクラスが一緒とかかも。

「まぁ、人の趣味にとやかく言うつもりはないからいいけど。

 うちの可愛い後輩ちゃんをたぶらかさないでね?」

 え? いま『可愛い』って言った!?

「たぶらかしてなんていないわよ?

 部活見学に来てくれたので、おもてなししてただけよー」

「あら、そうなの、すばるん?」

 かわいい……可愛いだって……えへへへ。


「おーい、すばるーん? 微妙に気持ち悪いわよ?」

 き、きもっ!?

「け、ケイ先輩ひどーい!

 私気持ち悪くないですよー!」

「うふふ、ごめんごめん。

 でも、何をどうして星座部なんかに?」

「あ、いえ。

 部活案内に星座が好きなら是非、ってあって。

 星を見るの好きだし、と思って来てみたんですけど……」

「あー……。うん、そうね。

 それだけ見ると、わからないわよね……」

ええ、そうなんです。

星座にまつわる神話、なんていうから、ギリシャ神話とか、星座の由来とか、そんな感じなのかと思ったんだけど……。

「なにおぅ?

 車田○美大先生の書かれた聖書コミックスの何が問題なのよー?」

 そうなのだ。

 見学に来るなり、とある少年漫画について熱く語られたのだった……。

 ちなみに、アテナ先輩のお名前はもちろんその作品由来らしく、さらに、弟さんもペガサスな主人公由来のお名前だとか……。

 こういうのも英才教育っていうのかなー?


「いや、うん、好きにしたらいいけどね。

 うちの子まで腐らせないでちょうだいね?」

「うちの子って、この子生徒会なの?」

「いいえ? 生徒会なのはこの子の双子の妹ね。

 主席の」

「あー! なんか見た顔と思ったら、入学式の時か!

 でもそれだったら、おたくの子じゃないじゃない?」

「いいのよ、妹とセットでざつよ……お手伝いしてもらってるから」

今、『雑用』っていいかけましたね?

「ふーん? ま、いいけど」


 アテナ先輩と別れて。

 他に行く所もなかったので、ケイ先輩について生徒会室へ向かうことになった。

「ちょっとした災難だったわね」

「いえ……あ、はい。

 なんというか、想定外すぎてちょっと固まってしまいました」

 ほんと、まさか星座部とは名ばかりの、聖闘○星矢部だったとは思いもよらなかった……。

 丸っきり嘘、ってわけでもない辺りがまた……。

「でも。

 おかげで、私何がしたいかが分かりました」

「何がしたいか?」

「はい。

 星座の話をしていて、ふと、昔家族旅行で行った時に見た星空を思い出して……。

 すっごくすっごくキレイだったなー、って。

 なので、『星を見る部活』を作ってみようかな~、って思います!」


 あれは確か、小学校くらいだったかな。

 家族4人で星を見に出かけた事があった。

 なんとか流星群? って、全然名前は覚えてないんだけど。

 お父さんが山のキャンプ場までわざわざ連れて行ってくれて。

 最初は、山の中なんて虫がいっぱいいるからやだなー、家でテレビ見てたいなー、とか思ってたんだけど。

 いざ着いて。

 お父さんが上を見てご覧、って言うのに合わせて見上げたら。


 家の辺りから見る星空とは全く違う光景が広がっていて、私はしばらく身動きもできずに見上げていた。

 帰りたいな―、なんて思っていたことなんか全部吹っ飛んでしまって、気がつくと横になってずっと見続けていた。


 その光景を思い出して、また見たいな、って思ってしまったのだ。


「星を見る部活、か」

「はい!」

「ふふ、じゃあすばるんには、ちょっといいものをあげましょ」

 そう言って、ケイ先輩は持っていたカバンの中から、ちょっと古いカギを取り出した。

「これ、は?」

「いいもの、よ。

 第二校舎の屋上に、ちっちゃな小部屋があるの知ってる?」

 屋上……?

「と、いうと、プラネタリウムのある?」

「それは、本校舎の屋上ね。

 第二校舎の方」

「わかんないかもです」

 この学校、第三校舎まであるからなー。

 ややこしい。

「ふむ。

 じゃあ、後で一緒に行きましょうか」

「いいんですか?」

「ええ、折角だからね。

 といっても、生徒会のお仕事終わってからになるから、少し遅くなっちゃうけど」

「お手伝いします!」

「ありがと」


 うーん、なんだろ。

 気になるけど、いいもの、って言うからには何か楽しいものがある、って思っておいて、いいよね!?

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