第2話 めざせ体育館

「それじゃあ、廊下に並んで体育館へいくよー」

 学校についてクラス分けを見て。

 やっぱりなゆとは別のクラスか―(双子だから当たり前なんだけどね、今まで一緒になったことないし)、なんて思いながらクラスへ。

 担任の先生から入学式の注意事項を聞かされた後、いざ入学式!

 の、前に…


「先生~、お手洗い行ってきたいんですけど、いいですかー?」

「おお、行ってらっしゃい。体育館の場所はわかる?」

「大丈夫です!」

「そ。

 じゃあ、先に行ってるから後から追いかけておいで。

 でも廊下は走るなよー?

 まだ時間あるから焦らなくていいからな」

「はーい」


 入学式って、きっと何時間かかかるんだろうし。

 その間お手洗い行けないってなるとやっぱり心配になってしまう。

 他のみんなは大丈夫なんだろうか?

「それにしても……ほんと広いな~」

 つい口に出してしまうほどに、この学校は広い。

 学校自体はそんなに古くなく、生徒数もいわゆるマンモス校って感じではないんだけど。

 とにかく設備がすごい。

 ちょっと街から離れてる(ヒトコトで言うと田舎)ってのもあって、広い敷地をめいっぱい使って色んな設備がある。

 通うのが大変な子向けにきれいな寮もあるし。

 しかもコンビニ付き!

 店員のほとんどがうちの生徒だ、っていうからちょっと笑っちゃうけど。

 他にバイト先がそんなにないから、倍率は高いっていう噂。


「さて」

 ついついモノローグが長くなってしまったけど……。

「体育館はどこだろう……」

 窓から見たらすぐわかるよね、って思ってたのに、ここの広さを甘く見てた。

 先生が言うように、時間的にはまだ余裕があるからいいけど、適当に歩いてれば着くかなぁ。


「あら? あなた新入生?

 どうしたの、体育館は逆方向よ?」

 きっとこっち! と思った方へ体を向けた、その時だった。

 言われて振り返ると、そこにはすごく綺麗な人が。

 上履きの色が青だから2年生の先輩だ。


 すっと切れ長の目、髪は綺麗な黒髪のロング、背は私と同じかちょっと高いくらい。

 あ、違う。

 すっごく姿勢がきれいなんだ。

 だから、ちょっと背が高く見えるのか。

 それに、スラっとしてるようで凹凸はしっかりあって、プロポーションもよくて。

 同じ制服着てるってのにこの落差はなんだろう……ちょっとだけ悲しくなってきた。

 いや、うん、私もなゆよりは育ってるし!

 きっとこれから! 来年には!! たぶん、きっと、おそらく……。



くしゅんっ

「星空さん、大丈夫? 風邪?」

「大丈夫。

 多分、おねえがよくわからないこと考えてるだけだと思う」

「あはは、なにそれー。

 あ、星空さんてお姉さんいるんだ?」

「うん、双子の。

 隣のクラスにいる」

「へー!」



「もしもーし? どうしたの?

 大丈夫??」

「あ! はい! ごめんなさい!

 つい、見とれてしまって!」

 って。

 何を口走っちゃったかな私は!?

「見とれ……?

 ふふ、ふふふ。

 面白い子ね」

 笑われてしまった……。

「それで、こんな所でどうしたの?

 あなた新入生でしょう?」

「えっと、ですね。

 まぁ、その、なんといいますか…」

 うう、この流れで『迷った』なんて言ったらまた笑われちゃう……。

 けど、他に言いようがないしなぁ……。

「まごまごしてないで、はっきりおっしゃい?」

 うじうじまごまごしていたら、今度は怒られてしまった……。

 でも……怒っててもきれいだな~。

 じゃ! なくて!!


「実は……体育館の場所がわからなくて……」

「ぷっ」

 あぅ、やっぱり笑われた。

「ふふふ、ごめんなさい。

 あなたやっぱり面白いわ。

 そうね、この学校広いものね」

「そうなんですよー。

 せんせーも待っててくれたらよかったんですけど」

「担任の先生は誰?」

風礼ふれ先生です」

「あー……伊織音いおね先生か。

 あの先生だったら置いていくわね……」

 何か思い当たるみたいで、妙に納得している先輩。

「え? フレ先生ってそんな感じなんですか??」

「あー、うん。

 そのうちわかるわ……。

 それじゃあ、えっと……そういえば名前をまだ聞いていなかったわね。

 私は冷水れいすいけい

 2年生で、生徒会の人間よ。

 よろしくね」

「わ、私は、星空すばる、です! よろしくお願いします!!」

「では、迷子の迷子のすばるちゃんを体育館まで連れて行ってあげましょ」

「よろしくお願いします……」

 うう、すっごいきれいなのに、いじわるだ~……。

 でもどうしよう……そんなにイヤじゃない……。

 私、そんな趣味ないはずなのにーーーー!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る