TASさんを召喚して異世界無双

真下

第1話 異世界はすーぱーぷよぷよとともに。

「というわけで、お前さんが選ばれたのじゃ」

「はぁ?」


 深々と頭を下げる爺。その背後にはすっきりとした青色。気がついたら俺はアラベスク模様の刻まれた円形の台座の上に、この爺と一緒に立っていた。

 台座の端まで行って下を覗いてみると、雲海が広がっていることが分かる。……となるとここは雲の上という認識で宜しいか?

 目の前にいる爺は自分の事を神様だと名乗っていたが、どうにもこうにも胡散臭い。だが、今起きている状況が神の力という言葉以外で説明出来ない限り、神様だという事を信じるしか無い。

 確か俺はネトゲのゲリライベントの待機をPCの前でしていたはずだ。後10分、というところで他のキャラクター達と会話をしている最中、気がついたらここにいた。

「で? 用が無いならさっさと戻して欲しいんだけど?」

「じゃからさっきも言ったろう? お前さんには世界を救って欲しいんじゃと」

「いや、そんな事いきなり言われても知らないから」

「じゃがのう……」

と口を濁す爺。何だよ、言いたいことがあるならさっさと言えよ。

「実を言うと……元の世界のお前さんの体は、了承してもらえる体で消失させてしもうたんじゃ。じゃからもう元の世界には……」

「はぁ?」

ふざけんなよこの爺。そんな事はもっと本人に確認を取ってやるとか慎重に行うのが当たり前だろうが!

「だったら神の力とかで俺の体を戻せばいいだろうが!」

「残念じゃが、一度行った事は修正出来ないんじゃよ……」

「つっかえねーな! この神は!」

と悪態をつきながらポケットに入っていたスマートフォンを取り出して時間を確認する。ゲリライベントまで残り3分……。

「じゃあどうやったら元の世界に戻れるんだよ」

「じゃからさっきも言った通り、別の世界の平和を取り戻したら元の世界に帰れるんじゃて」

3分でか? 無理に決まってるじゃないか。

「あのさぁ……。極普通の高校生に他の世界を救えると思ってるの? 常識的に考えろよ……」

「じゃから先程も言ったが、向こうの世界に行く前に何か1つ能力などといった特典を付けちゃろうと……話聞いてたかの?」

(特典か……)

俺はスマートフォンに表示されている時刻をまた確認する。残り時間は2分か……。どうする……。

 時を戻す能力。一瞬この能力が思い浮かんだが、この能力を貰ったとしても、俺が神に呼び出される事象は変わらないだろう。だとすると、俺は10分で世界を救わなくてはならない訳だ。これは非常に難しい。できるのはTASさん位だろう。……TASさん?

「じゃあ、TASの能力を俺にくれ」

「TAS? よく分からんが……本当にそれでいいのかのぅ?」

「あぁ、それでいい! 早くしてくれ! 俺には時間がねーんだ!」

「ほいほい、最近の若者はせっかちじゃのう……。ほれ、できたぞい」

本当にできたのか? いまいち実感が無いが……。

「じゃあ、異世界におくるぞい。準備は……」

「待ってくれ。試しに能力を使ってみたい。アンタが嫌がらせで能力を授けた振りだけしてるって事も考えられるからな……」

「そんな事はせんがのぅ……」

発動する方法がよく分からないので、とりあえず頭の中でTASの能力が目覚めるように念じてみる。するとどうだろうか。的確な指示が頭の中に湧いて出て来るではないか。なるほどなるほど。神様が異世界に送ってから57フレームで1Pコントローラーの左とR。2Pコントローラーの右とLを同時に押すんだな。

「OKOK、発動は確認出来た。今すぐ異世界に送って貰ってもかまわないぜ」

「本当かの? じゃあ行くぞい」

と爺が言ったあと、突然視界がぐにゃりと曲がった。俺はTASの指示通り、1Pコントローラーの左とR。2Pコントローラーの右とLを同時に押した。すると突然目の前が真っ暗になり……。




























テーテレテ テーテーテテテテー テテテ テーテーテテテテ- テテテーテテテンテン テテテンテン テテテテー





┌─────────────────┐

│        / ̄\ │

│ 「か・・・  | ^o^ | │

│  勝ったわ!」\_/ │

│        _| |_ │

│        |   | │

└─────────────────┘        


こうして


深い理由など全くない


異世界地獄は終わった










おわれ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る