ついに叶ったロリ転生! ……って、お股にナニか生えてるんですけどっ!?

河ノ竜

第0話 『願い』

『かわいい女の子になりたい』


 男子たるもの、誰しも一度は思ったことがあるだろう。


「はぁ~~、美少女に転生したい……」


 極東の島国、日本でも、例に違わず、そう嘯くティーンエイジャーがいた。


 夜の2時過ぎ。

 若者は、スマホ片手にベッドでごろごろ転がりながら、さらに続ける。


「超絶かわいいロリっ娘になって、異世界転生したいぃぃ……」


 ぼふっ、と大の字に手足を広げ、はぁぁぁ、と大きなため息をひとつ。


 ――なぜ俺は男子高校生なのだろう。

 そんな哲学的なことを考えながら、再びスマホに目を向ける。


 そこに映し出されているのは、カラフルな髪のちいさな女の子たちが、水辺できゃっきゃうふふしているイラスト。

 それを見つめて、もう何度目になるか分からないため息をつく。


「はぁ……君たちが羨ましい……」


 だいぶ重症っぽい台詞をはき、ふぁぁ、と続けて大きなあくびを。


「……寝よ」


 言って、彼は部屋の明かりを消した。



『かわいい女の子になりたい』


 その願いは、決して叶うことはない。全て、作り話フィクションでしかない。

 そんなことは分かっている。

 でも――


 ゆっくりと瞳を閉じる。


 明日は土曜日、正真正銘の休日だ。

 気が済むまで、たっぷりと惰眠をむさぼるとしよう。


 泡沫うたかたの――幼女になった妄想を、張り巡らせて。

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