第21話 おまけの話の、おまけ
一方その頃、聖域では……。
「さあ、大変お待たせいたしました。いよいよ皆様お待ちかね。本日のメインイベントです! 挑戦者はダンク。そしてその相手をするのはいつものマイ……ではありませんね。おおーっと、これはいったいどうしたことでしょう。解説のダンカンさん」
「ステージに上がってきたのは、なんとフェンですか。これはいったいどんな戦いになるのか、私も楽しみでなりません。ねえ、実況のコタロウさん」
「本当に楽しみですね。フェンといえばここには滅多に出てきませんが、その強さには定評があります。ダンクにとっては今日も厳しい戦いになりそうです」
多くの観客が楽しみにしているダンク対マイの戦いだが、代わりに出てきたフェンもまた根強い人気を誇っている。最初こそブーイングが起こりかけたが、それはすぐに女性冒険者たちの歓声にかき消された。
「ステージのそばでいつも命がけの中継をしてくれているメルさん。今日はいつもよりも危険な戦いになりそうですが、大丈夫ですか?」
「はーーい、メルでーーす! もちろん大丈夫でーーーーっす。この戦いも精いっぱい、中継するよーー! みんな、応援してねーーヨッロシクゥー!」
ステージと観客席の間で、女冒険者のメルが大きく手を振っている。
「じゃあさっそくステージの声を拾ってきまーす」
メルが手に持ったマイクを掲げると、会場にフェンとダンクの会話が聞こえてきた。
「俺はマイに戦いを申し込んだんだぜ、何でおっさんが出てくるんだよ」
「ああん? 誰がおっさんだ? いつまでたってもマイに勝てねえこのクソが」
「なんだと!」
「てめえがいつまでたってもマイに勝てねえから、俺がここで留守番する羽目になったんだろうがっ」
「は?」
「俺はな、外の風を感じてえんだよ。なのにマイのやつがお前に強くなってほしいなんて言うから」
「マイが……俺に強くなってほしいと……」
「いいか。仕方ねえからてめえをこの俺様が鍛えてやる」
「お、おう!」
「簡単に勝たせると思ったら大間違いだからな。俺に勝つまでマイに会えると思うなよ!」
メルがそっとマイクを引いた。
「えーーっと、今の会話を観客席に流してよかったんでしょうか。なんだか微妙な空気になったので、コタロウさん、マイクをお返ししまーす」
「は、はい、メルさん、ありがとうございました。これはいったい……」
「お父さんですな」
「なるほど」
「マイに会いたかったら、俺を倒していけと。まさに、父親と言っていいでしょう」
「それは、今後の展開がますます楽しみになりますね、解説のダンカンさん」
「ええ。私もこの展開から目が離せません」
「まったくです。では観客席の皆様も声援をお願いします。では戦ってもらいましょう。戦士たちよ、正々堂々戦うがいい!」
コタロウがマイクを観客席に向ける。
「レディーーーーーッ、ファイトォッ!」
観客席からは、まるで聖域を揺らすかの如く楽しげな声が沸き上がった。
――――――
おまけの話の、おまけ
~おしまい~
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