第24話 壁と風呂
虫よけ香が効いていて、コイルたちの周りは静かだ。
遠くでガサゴソと音がするのは、ウサギかネズミがいるのだろう。
人が怖いからか、ルフが居るからか、近寄っては来ない。
ポックルはもう木の下で眠っている。
コイルはミノルと、明日の作業について話した。
明日は今日立てた柱にもう2本柱を足して、ドアを2か所付ける。その後地面を均して固め、壁を付けて、今はまだ家の木に床がないから、倉庫の天井代わりに防水布を張る。
その後防犯用の魔道具をセットして、物置の完成だ。
余裕があれば風呂を組み立てたいが、風呂は2時間もあれば完成しそうだから、こっちを先にすればいいかもしれない。
「僕、すくなくとも1週間はここにいるけど、ミノルさんはずっとお仕事しなくてもいいの?」
「これが仕事だから大丈夫だ。エドワード様からは、2週間後に無事コイルを連れて屋敷に来るまでが仕事だと言われている」
「騎士様も大変だねえ」
「草ラーメン食うしな」
確かに。と、ひとしきり笑って、川の水で簡単に体を拭いてから毛布をかぶった。
暗くなったら寝る。明るくなれば起きる時計要らずの屋外生活だ。
朝はサッと顔を洗って携帯食で簡単に済ますと、昨日の打ち合わせ通りに2本丸太を切り出して、1本目と5本目の枝の幹からドアの幅だけ離して柱を立てた。
ミノルに天井用の防水布を木の上から張ってもらって、その間にコイルは地面を耕運機で薄く耕し、セメントの木の粉末を土に混ぜ込むと、なるべくきれいに平らにならしてから水をかけた。
数時間放っておけば床ができる。
床が乾くのを待つ間に、柱よりも細い上のほうの枝を切って、葉を落としたり近くの藪から細くて長い丈夫そうなものを切り出して集めた。
天井を張り終わったミノルには、風呂の設営をお願いする。
風呂は前にコイルが掘って露天風呂にした場所を使う。今は水を入れていないので、ただ穴が掘られているだけだ。
そこに買ってきた組立露天風呂が半分埋まるように、深さと大きさを調節する。
木製の組み立て式で、接着剤を隙間を埋めるように流して固めれば、防水もばっちりだ。
風呂には蛇口や追い炊き機能と同じく魔石で管理された排水口があり、組み立てた風呂桶の横に取り付けるようになっている。きちんと浄化した湯を排出するようになっているので、そこにパイプをつなげて、そのまま川下に排水を流すようにする。
お湯は蛇口から出して溜めることも出来るが、魔石の減りが早いので川からくみ上げるポンプを付けた。
ミノルが風呂を作っている間に倉庫の床が乾いたので、壁を付ける。壁は内側から細い枝を、隙間が空いても良いので適当に柱に釘で打ち付けていき、その上から防水布を張る。
その状態で外に出て、今度は外から、セメントの木の粉と白い海砂を混ぜた物に少量の水を入れて練り、壁に薄く塗っていく。
海砂は近くの海岸に取りに行くのは面倒だったが、土よりも白く、きめ細かく丈夫に仕上がる。
高いところの作業は少し大変だったが、太めの丸太を切ってきて踏み台にした。
本当は内側からも土を塗ったほうが良いのだが、倉庫だし、ま、いっか。と、すぐに手を抜くコイル。本格的に家を作るときには、本職に任せるべきだと、ミノルは強く諭した。
ところで、こうしてみると、セメントの木の粉は本当に万能だ。山には石灰石もあるので、本物のセメントを作ることは可能だし、実際に売られているが、セメントの木は平地に普通に生えている竹に似た雑草で、どんどん伸びるので安くて手に入れやすい。コンクリートほど強度はないが、その分扱いやすいし、要らなくなった時に壊しやすい。
買ってきた分がもう少ししかないので、これは買い足しておかないと。と、コイルの頭の中のメモ帳に記載された。
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