第15話 打ち身には湿布を貼りました

 コイルは、ポックルが心配なので一度オートキャンプに戻って、それからリーファンたちと一緒に晩御飯を食べることになった。


 朝に宿を出てから、昼ご飯を食べる間もなく、もうすでに3時を回っている。

 逆にこのスタンピードが半日程で終結していたのだともいえるが。


 慌てて帰ったが、ポックルはずっといい子にしていたらしく、「今日は、あるくの、おやすみなのねえ」みたいな感じでひんひん言っている。


 荷馬車の中のポックルの携帯食(途中で買い足した)は、自由に食べれるようになっていたが、ポックルは待っていてくれたらしい。


「でも、これからも遅くなることはあるだろうから、僕がいないときにも、きちんと食べてほしいなあ」


「ひひん。ぶるるっ」


 ひとしきりポックルとじゃれて、そうだ、今日は馬に乗ったから、ポックルにも乗れるようになったかも?とか思ったが、お尻が腫れ上がっているのを思い出し、後日の課題としたのだった。



 その後、オートキャンプの受付に、取りあえず1週間の連泊を申し込んでから、待ち合わせの宿に出かけた。




 宿では、食堂だと他の冒険者に囲まれて大変だろうということで、個室に食事を用意してもらっていた。


 リーファンの部屋はシングルだったが、さすが一流冒険者だけに良い部屋で、三人座っても充分くつろげる広さがあった。


「じゃ、まずは乾杯しようか」


「そうだな、コイルとの出会いに!」

「コイルとの出会いに!」


「えっ」


 ちょっと違うんじゃないかと思ったコイルだったが、もうすでに酔っぱらってご機嫌な大人二人を見て、ま、いっか、とした。

 ちなみに、エリカは興奮すると怖いお姉さんになるが、普段の喋りは落ち着いていて、リーファンと話すよりもイラっとしない。



 その後の話を聞くと、領軍の半数以上と冒険者の一部は、魔獣の残りが向かった方角にある村に偵察兼救援に向かったそうだ。


 その村はタイソンの町の領主の収めている村の一つだが、40万と推定される魔獣の群れを受け止められるほどの強度も人員もない、小さな村なので、住民の救助は絶望視されている。

 タイソンの町は、ここ山田村と同じように、遠征の準備を進めていたので、魔獣はタイソンの手前で食い止められているのではないかと思われる。

 当面、安全が確認されるまでの間、ここからカンサーイ方面への街道は通行止めになった。



 リーファンとエリカが偵察隊に入っていないのは、今回の功労者が偵察先で死亡するのを避ける政治的判断で、コイルが入っていないのは、今日の特攻の時のコイルのPSの能力が、リーファンの結界だと思われたためである。コイルはまだE級の初心者に過ぎないので、スタンピードの確認などという危険な依頼は出ないのだ。



 一通り状況説明が済んだ後、エリカがあの、謎の詠唱について語ってくれた。

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