噂の十四説
事故で片腕を失った子供がいた。
その子はとても落ち込み退院した後も塞ぎ込んでしまった。
友人はその子の家を何度も訪れ元気づけようとしたが、
幼くして片腕になった辛さが薄らぐことはなかった。
しばらくすると友人が訪れる頻度は減っていった。
同じ頃からその子がおかしなことを言い出した。
腕があるんだ、と。
周りの大人は、その子がおかしくなってしまったと悲しんだが
そうではなかった。
驚くことに、その子はなくなった方の腕を動かし
物を持ち上げて見せた。
本当に腕が生えているかのように。
それを見た人から話は広まり、嘘だと思っていた人たちも
実際に見ることでその子が言っていたことは信じられていった。
しかし、それはいつでも使えるようではなく
一日のうち数時間ぐらいしか使えず、
一般的な子供の腕が届く位の距離、持てる位の重さの物しか動かせなかった。
それでも、腕があったころのように動ける時間で
気持ちが晴れたのか外でも遊ぶようになった。
何度も家に来てくれた友人にお礼も兼ね遊びに誘いに行くのだが
その度に友人は眠っていた。
たまに友人と遊ぶことができても今度は腕が無く、
物を動かすところを見せることはできなかった。
そんな風に間が悪く見せることはできなかったのだが、
友人はその子の腕があると言う事を一緒になって喜んでくれた。
しばらくして友人が事故で亡くなってしまった。
その子は友人の親から、自身が事故にあったとき、
毎日病院への見舞いと教会へのお祈りへ行っていたこと聞き、
とても悲しんだ。
不思議なことに友人がなくなった日からいつも腕があるようになった。
その子は毎日友人の墓へ行き、今日も手を合わせている。
唯の噂。
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