【怪談実話】昔の話

柿木まめ太

霊関係の話⑱ 田舎の話

 これはおじいちゃんに聞いた話だ。何を思い出したものか、突然に語ってくれた。


 おじいちゃんのおじいちゃんというから、戦中か戦後まもない頃の事か。空襲も無かった田舎の土地での話で、おじいちゃんの家もその当時は、こつこつ貯めた土地財産でちょっとしたお金持ちだったのだそうだ。


 田畑と山林が少々あったらしいが、このおじいちゃんのおじいちゃんという人が酒飲みで、ちょっとずつ人に金を借りては酒を飲むので、とうとう借金のカタにすべての田畑や財産を取られてしまったらしい。


 そこまではまぁ、どこでも聞くよくある話だったのだが、この借金というのが酒の工面で借りたほんの小額だったという事で、ちょっと話が変わってくる。昔の事なので借用書というようなものも適当だったり、口約束や信用貸しだったりで、返す時には貸した方の言いなりという事が多かったらしい。

 つまり、じいちゃんのじいちゃんは騙されて財産を奪われてしまったという事だ。


 じいちゃん家はそれで家運が傾いてしまったが、問題はこの金貸した方の家で、ここには三人娘がいたらしい。これが後に、揃いも揃って嫁いだ先で知能障害のある子ばかりを産むという話で、田舎では噂が立った。


「あんな悪どい真似したよって、○○さんに祟られちょる。」


 不思議な事もあるもので、この家族、一時はじいちゃん家の財産で潤ったものの、総領息子の子供というのに、じいちゃんのじいちゃんと同じ酒飲みが生まれて、これが結局はこの家を酒で潰してしまったという。まったく、じいちゃんのじいちゃんと同じに人から金を借りては田畑を売り払ったとか。

 じいちゃんのじいちゃんの時のような、小額で多額を返したというのではなく、完全に呑み潰してしまったらしい。


 田舎では因果応報とか祟りとか言って、ずーっと語り草になっていたそうだ。この話をしてくれたじいちゃんも、「不思議な話なんだよなぁ、」と首を傾げていた。

 今はもう、田舎にその一族は居ないのだそうだ。どこで何をしているものだかな、とおじいちゃんはさして興味もなさそうに言っていた。

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