テーマ:よそおい 「仕立屋ディミアナの信念」 ~垂れ耳エルフと世界樹の街~

「明日の朝までにつくろって欲しいんだけど」

 閉店間近に舞い込んだのは、繕い物の依頼だった。

 濃緑の布地を贅沢に使った、年代物の祭礼服。

 タグを確認するまでもない、間違いなく祖母の仕立てた服だ。

「脇と裾ですね。袖もほつれてるかな」

 試着中に破いてしまったのだろうか。持ち込んだ当人は、まるで悪戯がばれた子供のように長身を縮こまらせて、こちらを窺っている。


『晴れの日を彩る特別な装いだもの、最高の一着にしてみせるわ』

 几帳面な縫い目から、祖母の声が聞こえてくるようで。


「間に合うかな?」

「間に合わせますよ」

 きっと若き日の祖母も、こんなやりとりをしたのだろう。

「ありがとう」

 その笑顔についほだされてしまうのも、きっと同じ。

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