テーマ:時計 「夜明け前」
時計職人の朝は早い。
真っ暗な部屋を抜け出し、角灯の明かりを頼りに階段をのぼる。
鳩小屋の前を忍び足で通り抜け、やっとのことで鐘楼へと辿り着けば、安らかな寝息が聞こえてきた。
「おーい、そろそろ起きてもらえませんかね」
「ふわああああ、もう朝ぁ?」
鐘の中からにゅっと顔を出したところをすかさず引っ掴み、ずるずると引きずり出す。
「あんたが起きないと朝が来ないんだからさっさと出て来なさい」
「休みなく働いてるんだから、夜くらいしっかり寝かせてほしいなー」
欠伸交じりの抗議を聞き流し、ほらほらと背中を叩いてやれば、地平線の向こうから朝日が昇ってきた。
彼の務めは『時間』を起こすこと。
こうして今日も、世界が動き出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます