秋風タービュランス

伊東デイズ

第1話 序章 秋

 残暑がようやく衰えを見せはじめ、初秋と言うにはまだ僅かに早いそんな時節の頃だった。文化祭まではまだ間がある。ハルヒが校内のお祭り目がけてダッシュするにしても時期尚早じきしょうそう、今はまだ何も考えていない――わけはないだろう。

 先週ようやく中間試験が終わって今ひとつ気分的に中だるみだったせいか、俺にも油断はあった。

 試験はハルヒいわく、

「楽勝。ていうか毎年同じ問題でも出してるんじゃない? こんどみくるちゃんに確認してみるわ。完全な手抜きって感じね」

 だそうで、俺ときたら谷口と仲良く来週から補習になりそうだった。

 落ち込みがちの俺をよそに、ハルヒの気分は天高く馬肥ゆる秋に流れていたようで、秋の風物か季語なのか知らないが焼き芋パーティーを目論んだのだった。こともあろうに部室の裏で、だ。

 集めた枯れ葉と廃材に着火する直前、奇声を上げて飛びこんできた――というか飛びかかった――岡部教諭に阻止された。部室棟は古い建物だから火気厳禁だし、大論外である。

 岡部も不幸にして二年連続で校内随一の暴走女の担任になってヅラ校長からいろいろと圧力がかかっているらしい。まして生徒の火遊びで建物が焼け落ちたとなればただではすまない。ハルヒを止める岡部が必死の形相ぎょうそうだったのが分かる気がする。――気の毒に。


 そんなこんなでごく自然な流れで芋の後始末は古泉たちがやって、これまた自然な流れで俺とハルヒは職員室に連行されることとなった。この頃は俺がハルヒと連帯責任を取るのがトレンドらしい。やれやれ、だ。

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