ゲーム世界の片隅で

北見 柊吾

私達は基本的に弱い。

 圧倒的に強い編成、固定ダメージを持ったモンスター達─────

 また、敵のチームがやって来た。よくもまぁ同じステージを何度も何度も。こちら側としても呆れる程の回数である。

 先輩方もこてんぱんに、みんな毎度モンスターこそ違えどこいつらにやられてきた。それでも、なす術がない。復讐しようにも力がない。

 圧倒的な強者を前にただ殺され、一緒に戦った仲間のうち誰かが無理矢理転生させられる。そして、強化の呪文を唱えるよう無理強いをさせられる。

 強化の呪文なんて代物は誰だって一回使ったら死んでしまう。つまり強化の呪文を使わされる事は死を以て経験値を与えるものであった。確かに、この森で錬成される僕達は他の森の出身者よりも強い強化の呪文を使うことができた。

 随分前に先輩方から、私達は圧倒的に弱いから、その分天から強化の呪文を強くしてもらったのだと教えてもらった。

 しかし、そんなものは更に狩られるだけの口実にしか過ぎない。しかも、私達が必死に戦っているのに固定ダメージスキルとかいう、使われただけで盾も効かずに死ぬしかない特殊技で難なく越えていく奴もいる。

 そして、誰も転生されなかったり、欲しい属性のモンスターが転生されないとただ悪態をつかれ罵倒される。

 先輩方から聞かされた話は残酷だった。

 更に言えば、僕達の森の出身者の中でも僕のような弱くて強化の呪文がそんなに強くないモンスターは強化の呪文を使うことなく存在を消されるらしい。

 また悲鳴が響いた。入口に近い先輩が殺されたらしい。名前も知らない先輩の転生する音が鳴った。

 聞くところによると、僕達のような奴らは別世界にもいるそうだ。ただみんな同じだ。種類は亀やドラゴン、アルパカやエンゼルとか。アヒルなんかもいるらしい。色んな奴らがいるらしいけど、扱いは大体同じ。みんな殺されて、強化の呪文をただ使うためだけの存在。

 また前で先輩が殺された。次に僕が配備され担当するエリアだった。殺されたのは仲の良い先輩だ。また殺されたなかで誰かが転生された。

 数分も経たないうちにまた森は攻略された。何度目の攻略かなんて本人達も分かってないらしかった。森の核であり僕達を生む森の神殿は壊されず、近付きもされなかった。

 にこにことモンスター達を連れて帰っていくプレイヤーに僕は思わず叫んだ。

「壊していけよ!」

 僕の声は森の中で響き渡った。

「僕達の森を攻略して、森の神殿も全部!先輩達を何人も殺したんだろ!壊していけよ!僕達をもう、犠牲者をもう増やさないでくれ!」

 僕は必死に仲間達に止められた。プレイヤーが神様なんて関係ない。天が神様なんて関係ない。

 僕の心からの叫びだった。

 プレイヤーは足を止めて振り返った。

「最近、強い光属性の娘が新しく仲間になったんだ。これが可愛くってね。はやく強くしてあげたいからまた来るね」

 笑顔だった。僕は絶望を感じた。もう復讐心も何もなかった。

 そしてまた数分後。森は攻略された。

 配備されていた僕はあっけなく殺された。

 そして転生した僕は悪態をつかれた。

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