ペーパームーンのお姫様

@Ichi-you

第一話 三日月中 一年月組 蒼井伊佐宵

 わたし蒼井 伊佐宵あおい いさよ(女の子なんだけど)十二歳、この春から三日月みかづき中学に入る。

 背は小六の時クラス女子で一番高く、(うわさでは男子含め学年一などとか、すなわち三日月小で一番背が高い、噂だからね、う、わ、さ)しかも最近なんだか肩の肉付きが良くなってる様で、、鏡を見ると上半身逆三角形、おまけに胸はぺったんこ、、、まるで体操か水泳男子じゃない。

 試に着てみたセーラー服が肩のあたりだけ窮屈きゅうくつで腕を回しにくかった。。。

 夏の半袖のセーラー服も家で試着させられたけど、どうしてあんなに袖口が細いの、腕にピッタリで暑苦しいったらありゃしない。

 (その時はまだこの服が着れなくなるなんて思ってもみなかった、サイズが合わなくなったって事じゃなく、人には見せられない、、、)


 それはともかく顔は割と色白(私が好きな唯一の部分、お化けっぽくて)、まゆが太くクッキリしていて顔が面長のせいか顔がきついとか目がきついと影でこそこそ言われてる、とんがり耳も影響あるのかも、私としては一重まぶたと色白のせいでぼんやりした顔だと思うのだけど、自分の顔のどこがきついのかよく分からない、友達もいないので理由も不明のままだ。(噂を耳にしたのはわたしの地獄耳のせい、比較的静かな教室の中なら大抵のヒソヒソ話が聞こえてしまう)

 例えば私の噂話。

「キリン?いやいやキツネ、白狐しろぎつねで尻尾が九本有るやつ」(私は妖怪かい)

「宇宙人だね、言動が怪しすぎる、あるいは翻訳機がいまいちなのか、それに耳を見れば一目瞭然だろ」(聞き耳をたてるととんがり耳になる)

「ま、魔物だよね、後ろからガブっと噛みつかれ血を吸われるの、吸われた人はカチンコの植物人間にされてしまうんだって」

 って私はそんな怪しいやつか超怪しいやつに思われていたんでしょうか、そう言えば小学校に入る前はこの辺りのチビ達(小学生も含む)を捕まえて恐怖に陥れるドラキュラ姫と呼ばれてた様な、でもほんとに噛みついたのは一人だけ、三つ年上の男の子が「噛みついて僕を仲間にして」って言ったから。

 だから喉を噛んであげた、血が出るほどは噛んでないよ、、、わっ、わ、わ、わ、その後ダメダメ言えないわ、あー私とんでもない事してた、なんておませな幼稚園児、ごめんねってあやまって寝転んでいる彼の顔の上に顔を被せて。。。

 その後何度か遊んだ、ううんデートだった、手を繋いでもらってもらって、近所のお店でお菓子を買って、公園とかで二人で食べた、、二、三回会って急に来なくなっちゃった、最後に会った時に「いさよちゃん大好き」って今度は向こうからキスしてくれたのに(んーなんてませたガキ、私もだけど)それっきり来なくなってしまった、思い出した、好きだった、好きだった、でもすぐに忘れちゃってた、名前も忘れた、、あれ涙が、、涙が、止まった、今日まで忘れていたのに、どこ行ちゃったのバカヤロー、それ以来男っ気が無いんだよね、いや友達さえも。


  私の名前なんだけど私が生まれて先祖代々の言い伝えだとかで(いつの時代?)十三代目の初めての子供の名前は男女にかかわらず<いざよい>という名前を付ける決まりが有ったとか。(無かったのかも)


 そんなことを聞いた記憶があるのだが久々に会った両親に「どうして私の名前は伊佐宵いさよなの」と父と母に聞いてみたら、「おじいちゃんが付けてくれた」(私が生まれた時にはどっちの爺さんもこの世にいなかったはず)

「違いますよ田舎のおばあちゃんが手相占いで」(誰の?)

「そういや天文館の掃除のおばちゃんじゃなかったか」(どうして)

「産院でお隣のお見舞いに来てたイケメンの男の子よ」(誰よそれ)

「そうそう聞いた全員が<いざよい>って言ったのよ」(あ、ありえん、適当なこと言ってる)


 でもぐっとこらえて「でもわたし伊佐宵いさよだよ」と言うと。

 「ほんとは十六夜じゅうろくやと書いての筈だったんだけどなあ」父が言うと、

「小学生は<じゅうろくや>としか呼んでくれないでしょ、それじゃ男の子と間違えられてしまうわ、だから<いざよい>と呼べて女の子らしい伊佐宵<いさよ>にしたの」

 どうやら名前の届の時に母が勝手に伊佐宵いさよに変えてしまったらしい、まあ十六夜いざよいじゃあだれからも<じゅうろくや>としか呼んで貰えなかっただろうから、それで良かったのかも知れない。

 結局誰が付けてくれたのかさえ不明のままだ。

 だけど<十六夜>で無ければならなかったと知る時が間もなく訪れる事になる。




 うちの家は古い上に狭い、六畳と四畳半とそれより狭い台所、以上、あっトイレとね。

 と言ってもここが自分のうちという気が全然しない、わたしは小学三年の時学校の寮に入って家を出てから引っ越した借家しゃくやだから、それに帰ってきてもわたしの居る場所がない。


 そのとき私は変なものが家に居るのに気が付いた、部屋の奥の小さな布団の中でもぞもぞ動いている、両親はまったく気にしていない。(私にしか見えてないとか、もしかして座敷童子ざしきわらし!?)と浮かれたのも束の間その座敷わらしもどきが「もんぎゃーー」と吠えたのだ。


 私はびっくりして「なになに何がいるの」元は低いが少し高めの声で聞いてみたら、

「何言ってるの冬休みに弟が生まれるって言ったでしょ、それなのに家に帰ってもこないでなにやってたの」となじられる。(あれいつもならこんな言い方しないのに)

「えーそんなこと聞いてなかった、弟ってお母さんが生んだの」とおバカなことを聞く私。

「お父さんが産むわけないでしょ忙しいんだから、コウノトリが運んで来たらどこの馬の骨かも分からないでしょう」とこちらもおバカな答えを返してくる、きっとわたしのおバカはお母さんゆずりなんだ。

 「あー伊佐宵に電話するのわすれてたー」ってこれはお父さん。

 私が忘れっぽいのはお父さんのせいです、はい。


 それでその座敷わらし、じゃなかった見ず知らずの生物はジュピターって呼ばれてた、「ねえその子ってハーフなの」またまた大歩危おおぼけをかます私。

「そうなんだ実は母さんはおフランス生まれだからな」(いやそれはありえない、あっても完璧な日本人、、、でもないか、完璧色白のかなり美形、美形なのはお父さんも、それに顔は違うが私の父より兄の方がしっくりくる童顔、どうして私は両親のどちらにも似てないの、それに私はお母さん以上に色は白いが病的というか、オカルトチックと言うか、、、)

「でもジュピターって英語だけど」

「細かいところは気にするな」

「はあ?」

 今度はお母さんが

「そう木星よ、私はよいの明星金星がいいって言ったのにジャン拳でお父さんが勝ったから、次の子は金星よ」

「お母さん宵はわたしだから次は暁にしようよ」

「あら知らないの、金星は暁の明星ともいうのよ」

「知ってるよ、そうじゃなくて暁そのもの、かっこいいじゃない」

「だったら自分の子供に付ければいいでしょ」

(あのわたしまだ私中学生になったばっかりなんですけど)

「そうしたらお婆ちゃんだよ、お母さん」

「いいわよ、いつまでも嫁に行けないよりいいわ、早く嫁に行きなさい」

「わたしまだ十二歳なんですけど」


 って姉はうやむやのうちに(伊佐宵いさよ)で、弟はジャン拳で(木星もくせい)、次の子は金星!?(知らない知らない、わたしは他人よ、それにお母さん金星は英語でビーナスだから男の子でもビーナスって呼ぶ訳、どうせなら私にビーナスって付けてくれてたらもっと女の子らしく育って見せたのに、漢字で書けば美茄子びなすだめ絶対ボケナすと呼ばれるわ、美無ス、ダメダメうつくしくないなんて、その通りだけど)。。。



 四月になったから寮に入れるなんだか皆より先に中学生気分、それではちょっと変わった私の中学生活を空の上からご覧ください。



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