辻橋女子高等学校⑰ ― 鏡の中のかわいい男の娘

 ほえぇ?!

 自分の胸の辺りを触ろうとしただけですけど? 

 この胸の高なり、そして柔らかみの正体が気になってしょうがないだけだ。別に沙紀の胸を揉んでいるわけではないだろ。それとも自分の胸を揉む人間はみんな変態扱いするというのか? てかこの場合、自分の胸じゃないからね、これ。偽物だから。まがい物だから。ムニュっとはしてるけど、さすがに本物のようなあの唯一無二の柔らかさに代替できるものなんてほぼないから。


 でもなんだろうな。なんというか……よくできてんだよな。


 

 胸に気を取られていたせいか、いつの間にかカラコンが馴染んできたようで目が開けられそうだ。


 眼球への張り付きを感じつつ、目を開ける。


 すると、目の前には、見覚えがありそうだけども記憶にない女の子がいた。


 誰だっけ? この可愛い女の子……ん~~と―――んんんーーーっ?!


 今さ、腕を動かしたんだよね。俺。

 みんなさ、やるじゃん。思いだそうとするときに自分の頭を掻く仕草ってさ。

 やると思うんだ。自然な行動だと思うんだ。

 だから人間であるのなら、いやチンパンジーやゴリラ、サルあたりも含めていい。そうであるなら、頭を掻こうがお尻を掻こうが誰も不思議に思わない。驚きもしないさ。


 でもさ、俺が頭を掻いたとき、全く同じタイミングで目の前の女の子も頭を掻いたんだよね。まるで自分を鏡にでも映したように―――。


 ってこれ俺じゃん! 俺じゃねーか!!!

 さっきから驚くタイミングとか寸分たがわずどんぴしゃで同じだし!

 沙紀のドレッサーの鏡に映る俺がここにいるよ!!!


 どおりでさっき頭掻いたとき髪が自分の髪じゃない気がしたんだよな。作り物感があるというか。

 実際のところ、知らないうちに長さが腰までありそうなウィッグが付けられていた。


 ライトブラウンのロングヘアーに青い瞳に……膨らんだ胸? さっきの俺の手に余る柔らかな膨らみはやっぱおっぱいだったのか。しかしよくこんな自然な膨らませ方をできるな。一体何が入ってるんだ…………っておっぱいボール!!!ちょうどいい大きさのおっぱいボールあったよ俺の胸に。どっから仕入れてきたんだ一体……。


 自分に一瞬でもかわいいと思った時の自分を百烈張り手したい。


 疑問はいろいろある。

 どうして沙紀はこんな格好を俺にさせたのか。

 なぜ沙紀はおっぱいボールを所持しているのか。

 突き詰めればきりがない。きりがないのだが、これだけは頭が今にも真っ白になりそうなほどに、ひそかに驚愕していることがある。


 


「……俺、こんなに肩幅狭かったっけ?」

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