彼岸の使者
八敷 燎
プロローグ
彼岸、それは死んだ者の行く世界。 私達生きる者が住む世界は此岸だ。 此岸と彼岸の間には生者も死者も渡る事の難しい川がある。 そんな川を自由に行き来出来る者達が居た。
昔、彼岸に住む者から此岸との交流を増やしたいという声が上がり、極小数の此岸の人間にある役目が与えられたのだ。
「お互いの岸を繋ぐ」
その役目を与えられた者こそ、自由に行き来出来る者達。
死者を見る力。
此岸に捕らわれた死者を祓う力。
彼岸から此岸へ一時的に死者を降ろす力。
他にも願いを聞いてもらう代わりにと、ずば抜けた身体能力や科学では解明できないような力を授かった者も居た。
その者達を皆『彼岸の使者』と呼んだ。 使者の証にどちらかの瞳が赤く、真ん中に十字型の印が入っている。
しかし、月日が経つにつれて役目が薄れ始め、終いには使者同士の意見の対立が生まれ今では二つに分裂してしまったのだ。
死者の願いを第一にする『赤い瞳』
死者を祓い生者を守る『紫の瞳』
この両者の対立は何年にもわたり続いている。
もちろん、今でもずっと……。
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