ロマン

「やっぱりさ、ロマンだよね、異世界転生」

「でもアネさんが好きなジャンルって異世界転送じゃん」

「誤差だよ」

「なにが?」


 そんなことよりも、と。


「異世界と言ったら、チートだよね」

「えー? 女神と勇者と魔王でしょ」

「あとチート」

「チート大好きかよ」


 ロマンだよ、と。


「茜は異世界に連れてかれたとして、そこでチートが貰えるならどんなのが良い?」

「時空操作」

「強い」

「アネさんは?」

「永久不滅」

「辛い」

「どこが? 不死身をも超えた最強のチートだよ?」

「なんで最強って言い張れるん?」

「字面がカッコいいから」


 それは確かに、と。


「いや、字面で考えたら魑魅魍魎とか天下統一とかのほうがカッコいいでしょ」

「魔導機関とか無限軌道も捨てがたいよね」

「わかる」


 意味がわからない単語も混ざってるけど、と。


「でも、永久不滅でどうやって魔王倒すん?」

「そりゃあ、無限コンティニューでしょ」

「泥試合かよ。やってらんないっつの」

「時空操作は?」

「時空間を捻じ曲げてブラックホールに魔王放り込めば、ほら一発」

「ズルい」

「でも、魔王が能力封じる系チートだったらどうにもならないよね」

「あー、……うん」


 ずるい、と。


「そんなの、どうやって攻略するのさ」

「伝説の武器とかでしょ」

「武器の能力も封じてきたら?」

「……ぱわーいずじゃすてぃす」

「もう、チート関係ないよね」

「能力封じる系チートは邪道」

「でもロマンあるよね」

「えー? 主人公が持つ分にはいいけど、敵役が持つと詰むじゃん」

「まあ、初見殺しもいいところだよね」


 どうにかしなきゃいけないのが主人公だけどね、と。


「まあ、異世界に行くことなんてないから、こんなこと考えてもどうしようもないよね」

「まあ、こういうどうしようもない話だから、ふと空いた時間を埋められるんだけどね」


 そろそろ行こうか、と。

 そう急かさないでよ、と。

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