モノローグ

 やっべ、遅刻だわ。父さん起こすついでに起こしてくれたって良いのによー。

 あー、飯が喉を通らねーわー。食欲出ねー。具合悪ぃー。学校行きたくねー。

 あの遅刻を咎めるように一斉に向けられる視線。耐えられたもんじゃねえぞ。


 あー学校行きたくねー。見ろよ、あの車の顔。明らかに俺を嗤ってやがるぜ。

 つーかホント、登校時間外の通学路って静かだわ。静かっつーか……抜け殻。


 全然清々しくねー朝だわ。校庭にいる奴らこっち見てる気がしてマジ辛いわ。

 あー、廊下で先生と出くわさねーだろーな? うっかり死んじまうぞ、俺ぁ。

 響く足音が恨めしい。引き摺る脚がやけに重い。ひどく重い扉をがらがらり。


「すんませーん、寝坊しましたー」


 どれどれ、真面目に授業を受ける馬鹿どもの面を拝んでやりますかなー、と。

 眠気を押し上げふいと教室内を一望してみると、あら不思議。誰もいねーし。

 なにか? 異世界転送に遅刻した感じ? マジかよ、俺ってツいてんじゃん。

 教室の壁に下げられた日めくりカレンダーで確認すると、今日は祝日だった。


「知ってた」


 なんとなくそんな気はしてた。けど、出来れば遅刻してたほうが嬉しかった。

 休日に学校なんて、俺は真面目ちゃんかよ。図書室にでも行けば良いのかよ。

 あそこはカビ臭くて嫌いだ。入学直後のオリエンテーション以来行ってない。

 気紛れに立ち寄って、勉強でもしてみるか? 馬鹿馬鹿しい。頭おかしいぜ。


「……帰って寝よ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る