深窓にて

温いビルの一室より

硝子を隔てて見る秋景

昼下がりに傾く影は夏の面影が去りにし証

曇るともつかずに空は白々薄れ

人工色の街からも乏しき鮮度を奪いゆく

見下ろせば街路樹達は陽射しを断たれた影の中

厚い雲が蓋をする冬の姿を想起せしめた

あれらの光を奪っているのは

ぬくぬくと欠伸を誘う温室のようなこの建物だ


上着の中で震え鳴く端末をつと撫でやれば

遠くの友が寄越して見せた唯一葉

囀りに添う写真を介した風景は

同じ季節でありながら

ビルひとつ聳えぬ空を背に負うて

日輪も心地好さげに淡く輝る

染まり初めた紅葉の彩がいとも鮮やかで

私は何も囀り返さず

星を弾いていつもの窓に背を向けた


古めかしくは白熱灯と天井扇

淹れたての珈琲香る喫茶室

常連顔の苺タルトと

季節を謳うモンブラン

漂う秋の気配も深く午後は過ぐ

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