第30話 虚妖ノ國:黄泉
ぬらりひょん…誰かの家に上がり茶を飲んでいったりするなど言われたり妖怪の総大将と語られていたりする。俺自身妖怪になんて詳しく無いからわからないが、目の前の老人はぬらりひょんと名乗った。
「はて、どうかなさいましたかのう?ところで王様、今回我々は侵略に来た訳では無いのですよ。」
ぬらりひょんは言うが脅されてここに来た俺たちは信じることができない。王様も疑っている。
「にわかには信じられんが、なら何のようでここへ来たのだ。」
王はぬらりひょんへ問う
「強いて言えば報告かのう。」
「報告?何の報告だと言うのだ。」
王は悔い気味に問う。ぬらりひょんはそれでも自らのペースを乱さず答える。
「新しい国の誕生と宣戦布告じゃな。」
ぬらりひょんの言葉に王様は固まっている。それを聞いている俺たちも驚いている。
「新しい国に…宣戦布告…だと?」
王様は聞き返すことしかできなかった。
「そうじゃ、ではまず国の説明をしようかのう。国の名は 『虚妖ノ國:黄泉』儂らは虚妖、魔物ではないのじゃ。」
ぬらりひょんの言葉に王様はまたも驚いている。
「魔物では…ない?」
「うむ、儂ら虚妖は村神殿によって造られと言うべきかの?未だに國と言うほど大きくは無いがそこを納めているのは村神殿じゃからな。」
「村神殿が…?」
「そうじゃ、そしてこれは宣戦布告に関わってくることなんじゃが、『黄泉』の目的は世界の、完全な平等、階級の廃止、
そして、生物の完全な自由化。まぁ、すぐわからんじゃろうから補足するとじゃな、生物総てに本能のまま欲に従い生きろ…と言うことじゃ。」
王様と俺たち、冒険者の人達もいまいちピンときていなかった。
「ふむ、つまりじゃな、誰にでも人を殺す権利があり奴隷にする権利、逆らう権利もある、奪う権利も土地を使う権利も何もかもが自由…そんな世界を造ろうとしておるのじゃよ。」
ぬらりひょんの説明に俺たちは絶句した。それはただの無法地帯である。動物や魔物と同じようなもの、完全に人間を人間とも思っていない理性などを感じさせない目標。
「そんなもの!認められるわけが無かろうが!!」
王が大声を上げ否定する。
「だから来たのじゃよ。そこの勇者たちよ儂ら虚妖はすでに各国へと渡りこの事を知らせている。止めたくば村神殿を殺すか改心させるしか無い。そして村神殿がいるのは『虚妖ノ國:黄泉』じゃ、國への行き方は各国にいる虚妖からこれと同じような板をもらい監獄塔屋上階へと行くことじゃ。」
ぬらりひょんはそう言うと袴の袖から板をみせる。その板には絵が描かれているが途中で途切れている。
「そしてこの板を手に入れるには虚妖達に認めてもらうしか無い。そして虚妖は自由じゃ、各国にいるのは間違いないがそこで何をしているかはわからん。じゃから捜すしか無い。儂からは選別として板をやろう。早く黄泉まで来てくれれば儂らも楽しめるのじゃがが、それではまたの。」
ぬらりひょんは板を地面に置き姿を消すと、いつの間にか魔物…虚妖たちも消えていた。それをした俺たちは気が抜けたせいか深い息を吐いた。
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