2章 板集め『虚妖ノ國』への道

第28話  魔物暴走 1

 ー???Sideー


 「…えー、と言うわけであなた方にはこの5カ国へ向かって今話した内容を宣言してもらいたいのですが…あの、聞いてますか?」


 魔王が総て居なくなったことが各国へと伝えられた。今彼女らがいるのは今ある獣国、王国、帝国、教国、魔国のどれにも属さない場所…監獄塔最上階に設置された会議室のような部屋の中である。


 そこには一見すると魔族や獣人と判断される容姿を持つ5人が五角形の机に向かいあいパイプ椅子に座っている。そしてその5人は部屋に置かれたホワイトボードとその隣に佇む女性を見ている…訳ではなく自由に世間話や上司に対しての愚痴など他愛のない話に花を咲かせていた。


 「まぁまぁ、そう怒らないでよヴァニちゃん。皆聞いるから大丈夫よ。」


 そう言ったのはヴァニちゃん…ヴァニタスのすぐ近くに座っていた狐耳で狐の尾が9本ある女性、妖妃。

 

 「妖妃様…それならよろしいのですが…。リュウキに報告しなければならないのですから事後報告でもいいので教えて下さいね…。」


 ヴァニタスは少しの疲れ気味に言った。


 「ハッハッハッ!心配するな!仕事はしっかりこなしておくさ!なぁ、風烏!」


 大きな声を上げ答えたのは額に一本の角を持ち、右手に酒の入ったひょうたんを持つ男性、角月。


 「角月、少しうるさいが同意ださっさと片付けさせて貰う。」


 背中に鴉のような黒い羽を持ち扇を仰ぐ角月と同い年ほどの男性、風烏。


 「それでは頼みますよ…って、ぬらじぃと夜宵ちゃんはどこへ?」


 ヴァニタスはいつの間にか空席になっていた2つの席を見て言う。


 「あー、夜宵ちゃんが勝手に引き連れて行っちゃったからぬらじぃが途中まで同伴してるんじゃ無いかしら?ぬらじぃは世話好きだし。…それじゃあ私たちも行こうかしら。それじゃあまたね。ヴァニちゃん。リュウキに宜しく言っといてね。」


 妖妃は立ち上がり出口へ歩きながらこちらへ軽く手を振ると出て行ってしまった。すると残っていた2人もそれに続くように部屋を出る


 「では行ってくるぞ。リュウキ殿に宜しくな。」


 「俺からも言う宜しく伝えておいてくれ。」


 「はい。かしこまりました。それではいってらっしゃいませ。…」


 ヴァニタスは2人を見送ると部屋の中を片付ける。片付けが終わるとヴァニタスは屋上へ向かう。そこには白と黒の大蛇が爬虫類の目が描かれた扉の前でヴァニタスを見つめていた。


 「「なにようか。ヴァニタス様。」」


 二色の蛇は問う。


 「扉を開いて。リュウキに一時報告をしたあと再び此方へ戻ってきます。」


 ヴァニタスは答える。


 「「承った。今開ける。」」


 そう言うと蛇は扉の前から退くと扉に描かれた目が光り扉がその光りに呑み込まれるように消えると黒い靄が現れる。ヴァニタスはその靄の中へ入っていくとこの世界から消えてしまった。


 靄は徐々に小さくなり光りの中から徐々に扉が現れ元の状態に戻ると二匹の蛇は門の前へ移動し眠りにつく。





ー主人公Sideー

 

 魔王が討伐されてすでに数日がたった。王都は未だ祭が続いているように騒がしい。しかしショウは村神にラフィを食われて気絶したあと未だに起きる気配が無い。他のクラスメイトには怪我が酷いので療養中だと伝わっている。


 「まだ意識は戻らんか。」


 王様とシオンがショウについて話をしている。王様はシオンからショウの目の前で仲間のラフィが村神に殺されたと聞かされている。意識が戻らないのはショックが大きかったからだと持っているが、流石に長すぎるそろそろ七日目だ。


 「ですがうなされることも少なくなって来ているのでもうすぐ目覚めるとは思いますが。」


 「そうだといいがのう、あと数日で勇者様方が来てから1か月だ、送り返す準備も万全あとは魔力のみだ、できれば問題なく送り返したいがラフィくんと村神殿の事もある。一度ゆっくり放しておきたいのだがな。」


 王様はそう言うと自室へ歩いて行く。シオンはそれを見送ると自室へ向かう。そこには未だに眠っているショウがベッドの上で眠っている。シオンはその寝顔を確認すると隣の泊めてもらっている元同僚の部屋へ入っていく。


 シオンが部屋から出たあとショウの指先がほんの少しだけ動いた。

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