島地団地島
千羽太郎
第1章 ようこそ島地団地島
プロローグ
島地団地島。
日本にある人工島。
本土から遠く離れ、無法地帯と化しているその島には様々なものが流れ着く。
ほら、こうしている間にもキミが海から流れ着いた。
こんにちは? 立てるかな? ああ、良かったね。
ん? 良くないって?
……そう、自殺しようとしていたんだね。なら、もうキミの名前を聞かない方がいいね。
何故? 名前ってのは生きようとしている人間の特権さ。なのに自ら死のうとするなんて……それではもう、キミがこの先その名前を使うことが許されない。
名前は、その人の命そのものだ。
だからね、命を1度自ら捨てたキミには…その大層な名前は似合わない。
どうすればいいかって?
僕に聞かないでくれるかな?
……でも、そうだね…キミがこうして迷うのは僕のせいでもあるわけだし…そんな子をここに1人置いておくのもね…。
一応、これでも善意は持ち合わせてあるからね。
キミはもう自ら命を絶つことはしないはずだ。
そうだろう?
何故ならキミは死ぬことを知ってしまった。恐れてしまった。
しかし安心しろよ。ここはそんな奴ごろごろしているからさ。
ここにいる警察だの、看守だの、アウトローだのその他もろもろは、ほとんどそんな奴らさ。
ここはキミの知る平和な日本ではない。皆が皆好き勝手やる無法地帯。日本政府もお手上げな島地団地島。
ん? 何故島地団地島なのかって? 団地島は、団地が中心になった島でね。
その団地にいろいろと建物が増設されて…今じゃ長年ここに住んでいる僕ですら、知らない道だと迷ってしまうくらいだよ。
それから、ここには魔女が住んでいてね。
この島は彼女がいるから保てているようなものでね。ま、管理人ってとこさ。彼女引き篭もりなんだけれども。
だから、気を付けなよ。魔女のせいでこの島はいつでも狂っているからね。
そう、狂っている。
ただ彼女のお陰でいろいろと恩恵も与えられているってのもあるから、別にどうも思わないのだけれど。
そうだね、まず……。
島の住民は本土の人間よりも力がある。
単純に力が強いのさ。あそこの大岩僕なら1回で粉々にできるよ。
だからかな? この島には順位というものが存在している。それはキミが生活していれば分かることだけれども。
超能力……?
そうだね。たまにそんな奴いるね。
そんな子は力が強くない代わりに、視力がとんでもなく良かったり、決して迷わない地図を見ることができるとか……面白い奴らばかりさ。
あそこに灯台が見えるだろう?
キミ、今日からあそこに住みなよ。灯台守がちょうどいなくてね。これからは灯台守と名乗るといいよ。
ほら、鍵だ。
僕がなんでこれを持っているか? そんなものは気にしなくてもいいのさ。
ちゃんと鍵をかけるんだよ。
今日はキミとお話出来て良かったよ。
やっぱりお薬飲むと気分が良くなる。
煙草もいいけど、やっぱりお薬飲まないとね。
お薬、そういえば、医者先生からはもう止めろと言われていたっけ?
でもお薬ないと僕色々とまずいからね。
え? 危ない?
いや、あれはなんて言うか……僕らが最終的に通る道って感じかな?
ノーリスクでは使えないんだ。
使えば使うほど、言動行動が支離滅裂になるんだ。
だから、あの、お薬飲むとね、こう、ね?
ああ、ダメだ。
早く帰らないと。
早く帰って寝ないと。
また、あの視線が……誰もいないのに。
いっぱいの視線が僕を見るんだ。
あああ、あ?
ああ、困ったら道先案内人の所に行きなよ。
えーとね、団地の第2棟の806号室にいるはずだからね。
それじゃあね
キミとまたあえるのたのしみにしてるからね。
そのときはどうなるのかな?
たのしみだな。
あああ。
あはははは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます