革命@番外編

@Maris

第1話 はじめてのXX

 そして、今、私は追い詰められている。今まで何度か、この状況を回避しようとして来たのだが、思わしい結果が得られたことは無かった。

 恥ずかしさを堪えて両親にも相談して、父からは幾つかの助言を貰ったし、母が送ってきてくれた本気で怪しげな魔法薬も試してみた。興奮して眠れなくなったり、精強剤の為か男性として非常に困った状態が丸1日続いて、キアラに変な目で見られたりといった苦労も報われなかった。


 最終手段と言う魔法薬(一時的に理性が弱まるという物らしい)だけは、試していないのだが、これに頼るのは本当に最後にしたい。自分が理性を失って、彼女に何をしてしまうか恐ろしいしな。

 また、精強剤を使えばとりあえずは何とかできるはずなので、例えば彼女に襲ってもらうとかすれば問題ない?筈である。どちらも彼女が妙な性癖に目覚めたりしたら困るので、本当に使いたくない手なのだ。


 彼女と私は、今は同じ王都に住んでいる訳だから、故意に夜遅い時間に彼女の職場を訪ねて、そう言った雰囲気に持ち込んだ事も何度かあるのだが、私は結局今日まで、彼女と一線を越えられなかった。どうしても恐怖を感じてしまうのだ。

 分かっていた事だが、私の肉体はきちんと男性として機能する訳だが、他の女性で試すと言う訳には行かないから、彼女に対して、精神的な不能だと自分の事を認める事は、非常に悲しく情けない物だった。


===


 今日、私達の結婚式が行われたのだから、当然の成り行きで、私の(これからは私達のだな)寝室で新妻となった彼女と2人っきりで、ベッドに腰掛けている。”初夜”と言う奴な訳なんだが、私は追い詰められているのだ。


「あの、あな、スティン兄様、今日はお疲れ様でした。少しはしゃぎ過ぎてしまった様で申し訳ありません」


「ノーラ、兄様は止して欲しいな?」


「あ、ノーラですか・・・」


 彼女は何だか擽ったそうに私の呼びかけを噛み締めている。本来縮めて呼ぶならば、”ノラ”辺りが普通なのだが、私は音から”野良”を想像してしまって、”ノラ”と呼ぶのを避けていたのだが、少し捻った”ノーラ”を気に入ってくれたようなので良かった。


「私達、本当にこれで夫婦になったんですね、貴方」


 こんな状態なのだが、”貴方”と呼ばれて、思わずジーンと来てしまった。


「・・・、あ! うん、そうだね、ノーラ」


 あ! 彼女がまた、固まってしまった。しかし、こんな事を何時までもしている訳にはいかないだろうな。ふと気付くと、彼女が真剣な目で私を見詰めているのが分かった。


「スティン兄様、あえてこう呼ばせてください。貴方は、私に”2度と涙を流させない”と誓って下さいました。私も、貴方に1つの誓いを立てたいと思いますけど、聞いてくれますか?」


「ノーラの誓いを聞かせて欲しい!」


「はい、私は”どんな事があっても、貴方の傍を離れない”と誓います。何だか結婚式の時と同じですね?」


 彼女は、少しだけ恥ずかしそうに、それでも明るく、誓ってくれたのだけど、その言葉が私の心にどんな影響をもたらしたのかは気付かなかったのだろうな。彼女の”どんな事があっても、貴方の傍を離れないを言う誓いは、私にとって正しく魔法の言葉だった。彼女の誓いの言葉は、私の中にあった私自身でさえ気付いていなかった、束縛から私を簡単に解き放ってくれたのだ。

 そうか、私は彼女を抱く事で、何故か彼女を失ってしまうという考えを持ってしまっていたのだな。これは多分、あの女性セシルさんが”僕”の心を救う為にその身体を使って行った事が原因だったのだと、分かるような気がする。あの女性が”僕”の下に留まっていたらどんな事になっていただろうか、いや、今はそんな事を考えている場合では無いな、せめて無事であってくれれば良いのだけれど。


「貴方、どうかなさったのですか?」


「ごめん、ノーラ、そして、ありがとう! やっぱり君は僕にとって最高の女性の様だよ」


「え? あの・・・、んっ」


 私は彼女の返事を待たずに、その柔らかな唇に、今までに無かった熱意を込めて熱い、長く、そして深い口付けをした。口付けが終わってからも、私は自分自身を止める事が出来なかった。多分、今はその必要も無いだろう。


「ごめん、ノーラ、少しだけ乱暴になるかも知れないよ?」


「はぁ、はぁ、はいぃ、兄様のなさる事なら何だって我慢してみせます」


 口付けの余韻の為か、少し息を荒くした彼女が、こんな事を言ってくれたのだが、それは私の情熱の炎に油を注ぐ行為に等しかった。


「本当に、ごめん。だけど、出来るだけ君にも悦んで欲しいんだ。だから出来るだけ、身体の力を抜いて、感じるままに動いて欲しい」


「あの、あの、えっ!」


 私は、返事を待たずに彼女の身体を乱暴にベッドへ押し倒してしまった。とても優しくとは言えなかったが、何とか彼女の体から力が抜けるまで、愛撫を繰り返したのだが、理性がもったのはそこまでだった。彼女の始めてを貫くと、もう自分を止める事が出来なかった。

 まるで、獣の様に彼女の身体を貪ったが、彼女は言葉通り最初の時以外は声を上げる事は無かった。もっと深く、もっと近くに、私だけの物にしたいと思い、何度も彼女の身体を貫いたか自分でも覚えていないが、私の中にこんな獣性があるとは思ってもいなかった。


「「はぁ、はぁ」」


 さすがに限界まで来たのか、やっと私の身体も、彼女に上に折り重なる様になり止ったが、2人の荒い呼吸が同期して聞こえた。

 最後の方は彼女の身体からは、完全に力は抜けてしまっていてなすがままだったが、結局、悦びの声を聞く事が出来なかった。少し、いや、かなり乱暴だったからな、大切な女性にこんな事をしてしまって少しだけ後悔を感じた。(何故か、母の最後の魔法薬を使った場合と同じ結果だった様な気がするぞ、拙いな?)


 そう思って、謝ろうと彼女の耳元に顔を近付けると、淡い月明かりの中で、彼女の目から一筋の涙が流れ落ちるのが、見えてしまった。それを見て自分が自分自身の手で誓いを破ってしまった事に気付かされた。


「・・・、ノーラ、始めてがこんな形で、ごめん!」


 意を決して、彼女に謝ったのだが、後の祭りなのだろうな。しかし、彼女から返って来たのは、意外な言葉だった。


「あっ! 今の涙は・・・。あの、”兄様”、今の涙は、嬉しくて流してしまった物なんですよ?」


「嬉しい?」


「はい・・・」


 まだ、気だるそうに聞こえる声だったが、聞き間違いでは無い様だ。少し恥ずかしそうに言った様だから、妙な性癖に目覚めたという訳でもなさそうだ。


「私、ずっと不安だったんです。”兄様”は、凄く優しいし、私の事を大事にしてくれるけど、私の”身体”には興味が無いのかな?なんて思ってしまっていて」


 少し意識がはっきりしてきたのか、彼女の声には力が戻っていた。どうやら、あまり聞いて嬉しそうな話の展開では無いな、だが、きちんと受け止めなくてはいけない事なのだろう。


「自分では”兄様”が、私の事を本当に大事にしてくれているから、きちんとするまで、我慢してくれているんだと思い込んでいたんです。でも、どうしても不安でした。ですけど、”兄様”は、こんなに強く私を求めてくれていたんだって、私は自分の身体で”理解”したんですから」


「そうか・・・」


 この返事は自分でも卑怯だと思ったが、真実を語るのは今では無いと思う。今だけは、彼女の優しさに甘えておこう。


「でも、次からは、優しく”して”くださいね、”あなた”」


 彼女は少しだけ、意地悪な感じで、こんな事を言ったのだが、私の身体は見事にそれに反応してしまった。


「あ!」「えっ!」


 私の”それ”が、彼女の滑らかなお腹辺りに触れてしまったから、彼女も気付いてしまった様だ。まあ、今更格好をつけても仕方が無いな。彼女のまだ力の入らない身体を、優しく抱き上げて、優しく、かすかに触れるような愛撫を再開した。


 そして、今度こそ、2人は2匹の野獣になったのだった。

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