温泉のある宿
のはらきつねごぜん
第1話温泉のある宿
「もうすぐ春だから雪がとけちゃうよ」
友人から電話がかかってきた。
それを聞いた時いてもたってもいられなくなった。
そのころスノーボードにはまっていたので
その日のうちに予定は決まった。
宿は決めていない
有名な観光地なら宿泊施設の案内に行くとたいてい何とかなったし
そういう無謀な旅のほうが楽しかった。
とある観光地に友人4人と車でむかう。
宿泊案内所に行くと、空き部屋のある宿のパンフレットをくれた。
民宿だけどこじんまりとしてきれいな感じだった。
岩のある昔ながらの作りの温泉もある。
目的は宿ではないので十分だった。
ところがそれは外側だけだった。
中は暗い廊下が続いていて奥にタヌキや鳥のはく製があった。
「気持ち悪い」友人の一人が案内の人に聞こえないように小声で言った。
しいっと唇に指をあてると「だってあれ」指さした。
それは犬のはく製だった、猟犬のように見える、暗くてごちゃ混ぜに置いてあるがち上がったり吠えたりしているようなポーズをとっている。
その奥にたぬきかなにかの動物もいてよ止まり木に止まったインコまでいた
聞こえないようにいったはずなのに案内の女が振り返った。
のっぺりした顔で60台くらいだろうか?
「あれはうちでかっていたものでね、悪さはしないから」
「はあ」うなづくしかなかった。
部屋は普通の畳だった、殺風景で小さな二重窓がある。
女がいなくなるとなぜかほっとした。
トイレと洗面所は部屋にあったのでそれだけが救いだった
友達が言った。
「一泊だけし我慢しよう、これから宿さがしもつらいし」
「そうだね」疲れていたのでその一言で不気味なイメージは追い払われた。
夜も遅くてその日は風呂にもいかず寝てしまった。
奇妙な音がしたのは夜中でたぶん気が付いたのは自分だけだと思う
すっすっすっ白いものが通っていく
それは足袋だった、白い足袋が通っていく
しばらく布団の周りをまわっていた音が消えた。
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