幻日逃避ARЯIA
澁谷晴
第1話「失業」
太陽が二つに増えた週末にアリア・デイは失業した。
天気はいいが、彼女の顔は軽快とは言えない。眉間に皺が刻まれて、もともと悪い目つきがさらにひどいものになっている。
ウェスタンゼルスの大通りは殲滅祭の前日とあってみんな浮かれており、それも相まって少女に殺意を抱かせた。
「アリアじゃんか。すげえ顔してるよ」
見知った声がしたので見ると、大学の先輩だったシェリル・オズワルドが楽しそうに話しかけてきたので楽しくなさそうにアリアは顔を向ける。
シェリルは身長が一八〇センチ以上もあり、一方アリアは一五〇センチと少ししかない。この背丈がコンプレックスだったのでさらに機嫌が悪化し、うめくように事情を話した。
「働いてた店が潰れたのよ、先輩」
「マジで? 何屋さん」
「ミイラ屋さん」
「なにそれすげえ怖い」
「薬になるからミイラって」
「ああ、煎じて飲んだりとか? 呪われそうだな」
「それで実際呪われたとかいう苦情が入って潰れた」
「いやあそれはこじつけじゃないの、へんなクレーマーの。呪われたって、どんな?」
「購入者が六人連続で死んで遺族に訴えられた」
「意外とヘビーだな。わかった、そんな辛気臭い店とはおさらばだ。アリアに就職先を紹介してあげるよ!」
シェリルは在学中からそうだったが、口ばかり親切なことを言うが大抵いつになってもそれが実現しない。だからアリアはいつそうしてくれるのか、その場で確約させることにしていた。
「じゃあ今から紹介して。今すぐによ、先輩」
「ええ、今から? マジで? それはちょっと急じゃないかな」
「そういう準備もできていないのに就職を紹介するとかいう重大な話をしないでほしいわ」
「まあまあ落ち着いてアリア! オレンジ食べる?」
ポケットからオレンジを取り出して薦めるシェリルだったがアリアはそんなものでごまかされはしなかった。
「今すぐに紹介して! それは不可避! 不可避な運命、義務、宿命だわ」
「まいったな。そこまで言うならやむを得ないだろうね。じゃあちょっと来てくれ。どうせ失業者だから暇でしょ」
無神経な言葉にまたアリアの目つきが鋭くなる。
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