月見草の棺

十七尉

第1話 霧雨

 兄を殺したのは、騎士隊の誰か。

 霧雨煙る黄昏の刻、大聖堂の祭壇前。ステンドグラスの淡い光に包まれた亡骸を見て、ユリアーネは泣き崩れた。

「彼ほど名のある騎士様が、正面から刺し貫かれるなんて……」

 葬儀の前日、棺屋は遺体を見て言った。

 右肩口から背を貫くように、傷跡が残っている。遺体は剣を握ったままだった。つまり、無抵抗ではない。

 兄――ハインリヒと正面から戦い、倒せるほどの力のある騎士。それはこの国には三人しかいない。


 “ヴィルフリート”=シュバルベンシュバンツ

 “セヴェーロ”=ベルトランド

 “リーンハルト”=フォン=シュテルンベルク


(この三人の誰かが……お兄ちゃんを…………!)

 ハインリヒと同じ、国王直属近衛騎士隊に属する三人。

 十四歳の妹、ユリアーネの中には消えない復讐心が刻み込まれていた。


 それから、二年――。

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