SS—ショートストップ—

柳 衣仁子



【高校球児とその関係者に敬意を表して──。】







 その時、放送席から見えた光景があまりにも劇的で、少女はうっかりマイクスイッチをONにしたまま声を上げそうになった。

 いや、正確には「すごい……!」ぐらいは言ってしまったかもしれない。だがそれ以上に大きな歓声が球場内を包み込み、運良くその声を消してくれた。


 中学校軟式野球県大会決勝戦──優勝を掛けたこの戦いは、誰もが強豪チームの勝利を予想していた。

 しかし実際に大会を制したのは、名もなき中学校だった。

 中でも守備力が光り、強豪相手に一点差で勝ち越し迎えた最終回では、逆転されそうなピンチをショートの堅い守りで凌ぎ切る。

 心を掴まれた、とはこの事だろうか。

 彼のプレーに目が釘付けになり、それは今でも、少女の脳裏に焼き付いていた──。


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