7章 第7話 協力/非協力の理由

「まあ、明は気に食わないからって言いふらしたりはしないから大丈夫だ」

 山神は意気消沈する花麦に声を掛ける。表情が明るくなったり、暗くなったりとなかなか忙しない。

「それとさっきも言ったけど、とりあえずは俺一人で調べてみるよ」

「いや、さすがにそういう訳には...。私からお願いしてるんだし」

 花麦は当然首を振るが、ここでは山神は引き下がらなかった。そこにはもちろん理由がある。

「俺もできれば手伝ってもらいたいけど、それは雨宮さんが1番嫌がることだろうから」

「凛ちゃんが?」


 山神は頷き、どこまで話したかなと続ける。

「あくまで推測になるけど、彼女は君を巻き込みたくないんだと思う。君1人でできることは限界があるし、仲が良いだけに上手くかわすことができた。さっきみたいに拒絶されたことはなかっただろ?」

 花麦は以前のやりとりを思い出したのか、確かにと呟く。普段はあんなこと言わないという先ほどの言葉もきっと嘘ではないだろう。

「そんな中で君は協力者として俺たちを連れてきた。勝手にストーカーの件を話したことに腹を立てたのもあるかもしれないけど、俺たちが君の協力者になるのを避けたかったんじゃないかな」

「だからあんな言い方をして、山神君たちが離れるように...?」

「そう。ついでにまた君が首を突っ込まないように念押しもして」

 現に明は協力を拒むことになった。花麦も自分からこの話をすることはなくなっていたかもしれない。雨宮の狙い通りになっていたと言える。

(もちろん、本当に迷惑だと思われている可能性もあるが...。とりあえず情報がいるか)

「花麦さ...!?」

 山神が花麦に目線を戻すと、彼女は頭を深々と下げていた。驚いた山神の呼び掛けは、おかしなイントネーションとなってしまう。

「お願いします。こんなこと急に頼んで、私が手伝えないなんて都合がいいかもしれない。だけど、大切な友達を...凛ちゃんを助けたいの」

 彼女は必死に頭を下げて訴えかける。彼女は彼女で、苦しんでいる親友を助けることができないことに悩んでいたのかもしれない。本来ならば、警察などに話せない理由は聞いてしかるべきなのだろうが、山神はそこまで求めなかった。


「分かった。協力するよ。ただ一つだけ約束したいのは、本当に危険だと思ったら魔特か警察に相談させてもらう。それはいいか?」

「...うん。何かあったら遅いもんね」

 花麦は少し悩んだ末、山神の約束を了承した。山神が微笑んで大きく頷くと、彼女も少し安心した様子で笑顔を見せた。


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