キリヌキ

田中みう

第1話 雨

雨の匂いなんて言葉があるけど、私には分からない。だけど雨の気配なら分かる。


お昼ご飯を買うため外に出ると日光の降り注ぐ気持ちの良い天気だった。7月の半ばなので気温は高めだけど、それでも気持ちの良い天気だ。

歩いていると気持ちの良い風が吹く。私の住んでいた地元とは違うこの風が私は好きだ。

風を感じながら歩いていると違和感に気づく。気持ちの良い風に混じりながら張りつくような空気を感じるのだ。

この空気を私は知っている。地元にいた時は毎日のように私に張りついていた空気ーーこれは湿度を持った空気だ。暑さを増やすその空気は懐かしさと不快感を私に与える。


買い出しから戻り、昼食を取っていると雨が降り始めた。少し前まで晴れていたのに今は真逆の天候だ。

晴れている時に買いに行ってよかったと思うと同時にあの普段はこの土地にない空気は雨の気配だったのかと思った。

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キリヌキ 田中みう @namakerumono

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