つばくらめ

吉岡梅

そろそろツバメの話をしよう

 つばめ。つばくろ。つばくらめ。日本において広い地域に生息する野鳥であり、体長は20cm弱。背はつやのある濃い藍色、腹は真っ白な体毛に覆われ、のどもとにはワンポイントの朱色が入っている。あと、かわいい。


 ツバメは飛翔する昆虫を、自らも飛翔しながら捕食するハンターであり、渡り鳥でもある。日本で良く見かける野鳥ではあるが、冬場は暖かい台湾やフィリピン等の東南アジアまで羽を伸ばす。そして、繁殖期になると日本にやって来て、営巣えいそうし、子育てを行う。


 他の鳥と違い、巣を作る場所は民家の軒先などの人の多い場所を好む。なぜかというと、弱いからだ。あんなに素早く飛ぶ一流ハンターの癖に、鳥の世界では最弱クラス。カラスはおろか、スズメにさえ負けてしまうため、ヒトのそばに巣を作り、天敵が近寄りにくいようにしているらしい。かわいい。どうやらヒトは、ツバメにとっての案山子かかし役らしい。


 子育ては初夏ごろに行い、雛が産まれてから巣立つまでの日数は、およそひと月弱。巣立った雛たちは、しばし日本で飛ぶため生きるためのトレーニングを積むと、また南に向かって旅立っていく。そして、次の年の初夏には、また日本に戻って来るのだ。


 なぜ、私がこんなにツバメについて知っているかというと、Webで調べたからだ。では、なぜ調べたかというと、一時期職場を共にしたからだ。今ではすっかり綺麗になった事務所の玄関上の外壁。いまだに私は、その場所を見上げてしまう。

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