@01391364

第1話

林檎は赤く色づき、ぽとりと見計らったように木から落ちた。

少年はそれを拾って、むしゃむしゃと頬張った。

それから、その林檎の美味しさというものを伝えるために家に飛んで帰った。

そのすぐ後、林檎の木に猫が登った。

猫は静かに木の上から下の様子を窺っていた。

しかし、やがてそれに飽きてしまうと、やはりなんの音も立てずに降りてどこかへ行ってしまった。

鳥も来る、蟻も来る、そして誰もが去っていった。

この時、林檎の木は、ここに存在し続けることができるのは自分だけなのだと悟った。自分が作った果実でさえどこかへ行ってしまうのだから。

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