たぶん骨
動物の骨、が落ちていた。なんの動物かは判らない。僕が、その骨に手を伸ばすと、梓が僕の袖をつかんだ。「触らない方がいい」と、梓は今までに聞いたことのない、低くかすれた声で言った。
「なんで触っちゃダメなの」
僕が訊ねると、梓は黙って首を振った。骨をじっと見つめたまま。
骨は、植え込みの陰にあった。飛んでいったボールを探していたら、この骨を見つけた。最初はゴミか石だと思ったのだけれど、よく見たら骨だった。
この骨がなんの動物だったのかは判らないけれど、埋めてお墓を作ってあげたいと僕は思っていた。でも梓が、骨に触らせてくれない。「お墓を作ってあげようよ」と言っても、梓は重たく、首を振るだけだった。骨を見つめて、なにかを考えてるみたいだった。
と。
「帰ろう」
梓が突然、僕の腕をつかんで立ちあがった。僕は驚いて、「痛い」と抵抗したが、梓は腕をきつく握って放さなかった。早足で、公園から逃げるように出る。いつの間にか、走り出していた。僕はすぐ苦しくなって、止まって欲しくて梓を何度も呼んだけれど、梓は走るのをやめてくれなかった。
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