第14話 きみちゃん、大ピンチ!

 C-membersの本拠地には今、姫美子と大悟しかいなかった。大悟は仕事をする際に使用する道具の研究、姫美子は前回の仕事に関する報告書の作成に取り組んでいた。


「お茶淹れます」

「ありがと」


 大悟の返事を聞いた姫美子が、作業を中断して立ち上がった。

 そして、そのとき。


 ピンポーン。

 

 客が来たようだ。対応は大悟が行う。


「はーい」

「あ、すいませーん。ちょっとそちらにお伝えしたいことがあるので、開けてもらっても、よろしいですか?」

「あー、はいはい」


 どうせ大した用事ではないだろう。早く終わらせて、一服して、作業に戻ろう。そう思い、大悟は玄関へと向かった。


「はいはーい」


 ガチャ、と大悟はドアを開けた。するとその直後、


「今すぐ金を出せ!」

「え⁈」


 大悟の目の前に姿を現した一人の男が、大声を出した。

 男の正体は、強盗だったのである。


「おい、早くしろ! 刺すぞ!」


 男はナイフを持ち、その刃先を大悟に向けて脅した。


「……ギャーッ!」

「うわっ!」


 大悟の絶叫に、男は怯んだ。そして、


「うおーっ!」

「あ、待てコラ!」


 刃物を出された恐怖の余り、大悟は外へと飛び出してしまった。刺される危険性も考えずに、男の目の前を駆けていった大悟。ドアが開けっ放しだったため、簡単に外に出られたのだ。


「弱虫め! これで邪魔者はいなくなった……」

「ディーゴさん、お客さんですか?」

「ま、まだ誰かいたのか⁈」


 近くなる足音。男はすぐにドアを閉めた。


「ディーゴさ……」

「あいつなら、もう逃げたぞ」

「っ!!」


 刃物を持った男が視界に入った直後、姫美子は硬直した。


「怪我したくなかったら、今すぐ金出しな、お姉ちゃん」

「……」


 どうしよう……!


 姫美子は今にも泣きだしそうだった。こんなことは姫美子にとって、初めてだった。いつもなら、姫美子のそばには頼れる男性陣がいるけれど、今はいない。


 一体、どうすれば……。

 私が素直にお金を出せば、命は助かる?

 でも……。


 ぐぅ~。


「……へ⁈」


 突然聞こえてきたマヌケな音に、姫美子は思わず声を漏らす。


「う、腹が……」


 男は、空腹のようだ。


「お腹、空いているんですか?」

「み、三日間何も食べていないだけだ! そんなことよりも早く金を……!」

「……待ってください! 私、食べる物を用意します!」

「え?」

「早く中に入って! このままじゃ倒れちゃいますよ、あなた!」

「お、おい……」


 姫美子の勢いに押され気味の男。自分の目的を忘れてはいないが……。


 ぐ~きゅるるるる……。


「うぅ……」


 男は苦しそうな声を出し、ガクッと体制を崩した。

 男は弱っている。もう何かを持つことも苦しいくらいに。


「ほら、食べなきゃダメですって!」

「そ、そうだな……。じゃあ、ごちそうになるよ」

「どうぞどうぞ!」

 

 刃物男をもてなすことを心に決めた、姫美子であった。


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