第20話 絶景までの道のり

 ヤヨイは、すぐに能力者の聖地を目指さなかった。

 情報端末をいじっている。

「最初から連携してれば、もっと上手うまく戦えたはず」

「次、気を付ければいいよ。何やってるの?」

 カケルがたずねた。

「行きたいところがあるの」

「お、二人でか? いいぜ」

 すぐに言葉を発するタクミ。

「近くまで行けるから、みんなで行こう。乗合自動車のりあいじどうしゃで」

 ヤヨイが笑顔で宣言した。

「ああ、バスね。やっぱり、そうなるのよね」

 頬を緩ませるスズネ。

 荷物を背負ったヤヨイ組は、停留所に向けて歩き出す。

 ほどなく到着。細長い車がやってきた。ヤヨイの故郷とはことなり、乗るときに料金を支払う。

 広い道路の右側を走るバスの中。

「親交を深めるのがいいと思う」

「そうよね。分かるわ」

 ヤヨイの言葉に、スズネが同意していた。

「近くに、絶景っていうのがあるんだって」

「バトル以外のことに熱心になるなんて、珍しいね」

 隣に座る十代半ばの少女を見ながら、同じくらいの歳の少年が言った。

 ヤヨイの表情は輝いている。

 十代後半の少年は、乗り気ではない。

「のんきだな、カケル。やっぱり、歩くんだろうな」

「全く、タクミは。もう」

 隣の十代後半の少女が、ふくれっ面で見つめていた。


 能力者といっても、バトル以外では普通の人間と同じ。

怪物かいぶつがいたら、どうしようかしら」

「俺が守ってやるぜ」

素敵すてき!」

「俺がやられてるあいだに、全力で逃げろ」

 バスを降りて歩きながら、スズネとタクミは軽いノリで話をしていた。

 辺りは木々が覆い茂っている。草で隠れそうな細い道に、四人以外の人影はない。観光客には人気のない場所。虫や鳥には大人気。

 ヤヨイたちは、移動に苦労している。

「思ったよりも遠い」

「もう少しだ。入り口で休憩しよう」

 カケルが提案するまでもなく、四人は洞窟の入り口で一休みする。

 何かを話す、ロングヘアの少女と短髪の少年。すぐ横には、微笑するミドルヘアの少女と長身の少年。

 木々の陰から、二人組がやってきていた。

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