第44話新楽府其二十八 牡丹芳(1)

美天子憂農也


牡丹芳 牡丹芳

黄金蘂綻紅玉房 千片赤英霞爛爛 百枝絳點燈煌煌 照地初開錦繍段

當風不結蘭麝嚢 仙人琪樹白無色 王母桃花小不香 宿露輕盈泛紫豔

朝陽照耀生紅光 紅紫二色間深淺 向背萬態隨低昂 映葉多情隱羞面

臥叢無力含醉妝 低嬌笑容疑掩口 凝思怨人如斷腸 穠姿貴彩信奇絶

雜卉亂花無比方 石竹金錢何細碎 芙蓉芍藥苦尋常 遂使王公與卿士


天子が農耕に心をかけることを讃える。


牡丹の花 牡丹の花

黄金の花しべがほころび 紅玉の花房から ためらいがちに顔を出す。

赤く千の花びらは爛々と輝く雲のよう 赤い花が百の枝に咲き まるできらきらと輝く灯火のよう。

その地を照らし 錦の織物をさっと巻き広げ 蘭麝らんじゃの香りがふわっと広がっていく。

仙人の琪樹きじゅは白いだけで色もなく 西王母の桃は小さく香りがない。

夜半の露は紫の艶やかな肌に揺れ 朝日を受ければ赤く光が放たれる。

赤と紫 この二色がきらきらと淡く溶け合い 背を向けたり 前を向いたり 上や下 思い思いの姿を変える。

多感な思いを その葉に秘め その顔は 恥ずかしげに 覆い隠す乙女のようだ。

その愛らしい笑顔をうつむかせるのは 口を隠すためなのか。

つれないひとを怨み 腸を断つほどの思いを込めるのか。

その美麗な姿 気高さ これこそ この世のものとは思えないほど 美しい。

この美しさには 群がる草も 咲き誇る他の花も まるで比べ物にはならないのである。

石竹 金銭花 なんと小さく品のないことか

蓮の花も 芍薬も 牡丹に比べれば ただの並の花。

この美しさには ついに気高き王侯貴族が 花を愛でようと いてもたってもいられない。

もはや 日々 車を連ねて 大賑わいになっている。



※蘂:しべ

※房:花房

※千片:片は花びら

※仙人琪樹:仙界の玉の木

※王母:西王母( 中国神話に登場する女神、女仙の長)が漢の武帝を訪れ、仙界の桃の実を与えた伝説がある。

※芙蓉:蓮の花

※卿士:身分の高い人。


○牡丹の花への熱狂ぶりを表現している。

○元和憲宗の時代から牡丹への熱狂が始まった。




 



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