第22話長恨歌(13)
含情凝睇謝君王 一別音容両渺茫
昭陽殿裏恩愛絶 蓬萊宮中日月長
迴頭下望人寰処 不見長安見塵霧
唯将旧物表深情 鈿合金釵寄将去
釵留一股合一扇 釵擘黄金合分鈿
但令心似金鈿堅 天上人間会相見
仙女となった楊貴妃は 思いを込めて道士を見つめ 天子への感謝の言葉を述べるのです。
天子様と ひとたびお別れをして すでにそのお声もお顔も 遠くかすんでいます。
かつて昭陽殿で賜った恩愛は あのように断ち切られ
この蓬莱宮で過ごす月日が 久しくなりました。
あちらこちらに振り向き 下界を見渡すのですが 長安など見えることはなく
目に入るのは 塵や霧ばかりなのです。
今はただ 懐かしい品々にて 天子様への深い想いを 表したく存じます。
螺鈿の小箱と 黄金のかんざし これを天子様へお届けください。
二股のかんざしは 一本は私の手元に残し 小箱は二つに分けようと思います。
黄金のかんざしは二つに裂き、小箱は蓋と本体に分けてしまいます。
私と天子様の想いが 黄金のように 螺鈿のように 堅いままであるならば
天上であれ また人の世であれ 必ずまた お会いできると思います。
※音容:声と顔
※渺茫:遠くぼんやりとかすんでいる状態
※昭陽殿:漢の宮殿の名前
※恩愛絶:互いに愛情を抱きながら運命により死別した
※蓬莱宮:仙人の山蓬莱山にある宮殿
※
※旧物:玄宗と楊貴妃が結ばれた夜、固めの品として、玄宗は鈿合(螺鈿細工の小箱)と金釵(金のかんざし)を楊貴妃に賜った。
思い出の深い旧物により楊貴妃の天子に対する深い愛情を示す。
○かんざしは二股の片方を折り、小箱は蓋と箱を分ける。
片方を手元に残し、もう片方を道士に託して玄宗に届けさせるのは、楊貴妃自身に逢った証拠と、深い想いが残っていることを示すため。
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