第17話長恨歌(8)
帰来池苑皆依旧 太液芙蓉未央柳
芙蓉如面柳如眉 対此如何不涙垂
春風桃李花開夜 秋雨梧桐葉落時
西宮南苑多秋草 宮葉満階紅不掃
梨園弟子白髪新 椒房阿監青娥老
宮殿に戻れば 御池も御苑も何も変わりなく
太液池の蓮の花も麗しく 未央宮の柳もそよそよと風になびきます。
蓮の花は亡き楊貴妃の面影を写し 柳はその眉のまま。
この何も変わりがない宮殿を見るにつけても 亡き人を想い 涙はこぼれ落ちるのみとなるのです。
春の風に桃李の花が開く夜も 秋の雨に梧桐が葉を散らす時も同じこと 涙なしではいられません。
西の御殿 南の御殿に 生い茂るのは秋草ばかり
きざはしに散り落ちた紅葉など 誰も掃き清めることもなく そのままに置かれます。
梨園の楽生の新しい変化と言えば その白髪だけ。
后の部屋を手配する女官の青々と描いた眉にも 老いが見えています。
※太液:漢の宮殿の太液池
※未央:漢の宮殿の未央宮
※芙蓉は蓮の花、美女の容姿
※柳は美女の眉
※梧桐はアオギリ
※梨園:玄宗が設置した宮中の歌舞音曲の研修所。そこに学んでいた若々しかった楽生(楽人)の変化は、「新しく白髪が増えた」だけ、彼女たちも年老いたという表現になる。
※椒房:漢の未央宮の皇后の居所
※阿監:後宮を監督する女官
※青娥:青々と描いた眉、若い時と同じように化粧をする老女の姿を皮肉っている。
○やっとのことでかつての宮殿に戻った玄宗一行、その宮殿は何も変わりなく、美しいままである。
変化は、楊貴妃がすでに故人、梨園の楽人も白髪が増え、後宮を取り仕切る女官も年老いていること。
西の御殿と南の御殿の生い茂る秋草と、掃き清められないきざはしの紅葉を見るにつけ、かつての輝くばかりの風情が何もないことが、強調されている。
○源氏物語「桐壷」:桐壺帝が生前の桐壺更衣の様子を思い出す。
絵に描ける楊貴妃の容貌は、いみじき絵師といへども、筆限りありければいとにほひすくなし。
太液の芙蓉、未央の柳もげにかよひたりし容貌を・・・
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