隔離された世界の片隅の。

空唄 結。

第1話 血管愛好者。

あら、お兄さん、見ない顔ね。

ふうん、旅人?

良くこんな街まで辿り着いたわね。褒めちゃいたい。


この街の住人は変わった人ばかりなの。

驚いちゃうと思うわ。

え?興味深い?

なら良かったと言うべきかしら。


でも注意して。

彼等は繊細なの。

あなたが興味を示していると知ったら、危害を加えてくる子もいるかもしれないから。

ええ、確証はないの。

だってこの街へ辿り着いた『住人』以外のヒトはあなたが初めてなのだもの。


それより、ねぇ、お兄さん。

私があなたの案内係をしてあげるわ。

この街に滞在している間は衣食住の提供もしてあげる。

ああ。いいのよ。

家族はいないし、部屋は沢山余っているの。

多分この街1番の屋敷に住んでいるのは私だから。


だから……ね?

泊まりなさいな。


その代わりのお願いが、あるのよ。


先にいいと言って頂戴。


内容による……?


それもそうね、仕方ないわ。


私、あなたの腕の血管が堪らなく愛しいの。

朝昼晩と舐めさせてくれないかしら。

ああ、大丈夫よ、中の血液は我慢するわ。

ただ少し舐めさせてくれるだけでいいの。


駄目?衣食住と交換なのよ?


あら。うふふ、有難う。

交渉成立、ね。


改めまして、フィクリードへようこそ。


私はナプラ。

この街の管理者で、血管愛好者よ。


あなたの血管……とても綺麗で美味しそうで、素敵。

あなたの滞在を心から祝福するわ。

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